市川拓司

市川拓司「恋愛写真―もうひとつの物語」

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 この間、映画の「恋愛写真」を見たのだけれど、いいところもあるのに、どうしてこうなっちゃったのだろう、というもどかしさを覚えた。

 そして、同じように「恋愛写真」という映画を見て、そこからイメージされたものを小説にしたいと思った人がいるということに興味を持った。それが「いま、会いにゆきます」で人気の市川さんだということもあり、なおさら。

 市川さんの本を読むのは初めてだった。私はどうも売れているものに対して懐疑的になってしまうところがあるようだ。

 でも、この小説はとても良かった。文体は「エンターテイメント」らしい軽い感じなのだけれど、時々ちょっとした表現に鋭い観察力が光る。

 映画より断然いい!!

 初めのうちこそ「静流はこんな人じゃない!」と思っていたけれど、読み終わる頃には、静流はこういう人でなければ絶対にダメだというように思えてくる。

 静流と、誠人という二人の主要な人物のキャラクターの作り方が、もう、にくすぎるほど上手い。現実にはありえないよ……とつっこみを入れたくなるところもあるけれど、でもいつのまにか世界にはまりこんでしまうと、すべてが必然に感じられてくるから不思議だ。

 この話は一言でいうと「片思いの話」なので、切ないと言えばとっても切ないけれど、自分の恋に精一杯になりながらも、人を思いやることを忘れない三人を描いているからこそ、この作品は、温かい余韻を残してくれる。

 多分、ターゲットは十代~二十代前半あたりなのだと思うけれど、「まだまだ私は純粋な気持ちを忘れていない」という人や、「今、片思い中」という方は、是非、読んでください!

(そうそう、今日の朝日新聞に市川さんのインタビューが載っていた。市川さんは、「妻に読ませるため」に小説を書いているとのこと。その「妻」は「一年に十冊ほど」しか本を読まないような人らしいけれど、その人でも読めるものをと思った、と。あ~、だからこの人の作品にはどこか普遍的な香りがするのだと納得した。多くの人になにかを伝えようと思ったら、まず身近な人間に伝えるべきことを伝えるところからだよなというのも、最近思うことの一つ)

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