吉田修一

吉田修一「日曜日たち」

久しぶりに本を一冊読み終わった。

この頃、本当、読めていないなぁ。
でも、一日30分でも小説を読む時間があると、結構幸せな気持ちになれる。

特に久しぶりに好きな作家の本を読むと、やっぱり好きだなぁという気持ちが溢れてくる。その作家が好きというのもあるし、小説が好きというのもある。

そして自分が気持ちの上で、小説の世界から遠ざかってしまったわけではないのだと、ちょっとほっとする。

 

5つの短編

この小説も吉田修一らしい本だった。

5つの短編からなっているのだけれど、やはり、ちょっとダメな男の子を主人公にした作品がいい味を出している。

 

一番好きなのは、一番初めの「日曜日のエレベーター」。この男のだめっぷりがいい。

そして、この台詞。

誰かを愛するということが、だんだんと誰かを好きになることではなくて、だんだんと誰かを嫌いになれなくなるということなのだと知ったのだ。

すごくいいなぁ、と思った。

でもどうして嫌いになれなかったのに、別れてしまったのだろう。

それがダメ男がダメ男たるゆえんなのかもしれないけれど、「あ~、どうして!」という気持ちは最後まで残り、でもそれは不満というより、余韻として良い感じに残る作品だった。

 

あと「日曜日の運勢」も良かったかな。同じような主人公が、でもちょっと違った行動を取る、お話し。

 

それから全編に「脇役」として、二人の子どもが出てくる。それがつながりがない5つの話を、串でさしたように貫いている。こういうのも吉田修一らしくて好き。

しかも「脇役」ではあるのだけれど、効果的に主人公の気持ちを変えるのに役立っている。

 

文庫本になっている本なので、電車の中で読む本のないときなど、ちょっと買って読んでみてもらいたいな、と思います。

日曜日たち (講談社文庫)日曜日たち (講談社文庫)

 

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