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「その日のまえに」重松清

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その日のまえに その日のまえに
重松 清

文藝春秋 2005-08-05
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おすすめ平均

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久しぶりに重松清を読んだ。最近1週間に1冊読めるくらいのペースになってきて、なかなかいい感じ。ま、それだけ暇にしているということか……(^^;)

重松さんは、やっぱり上手い。短編をこれだけ正確にまとめあげる力を持つ作家って、あんまりいないのではないかという気がする。
この本には、人の「死」をテーマにする7つの短編が入っている。初めの方はそれぞれバラバラの完結した作品なのだけれど、最後の3つは「その日のまえに」「その日」「その日のあとで」と同じ登場人物たちの続き物で、さらにそこには前半の4つの作品に出てきた他の登場人物たちがちょっと現れたりする。……という作りになっている。
はじめの2つは「死」といっても、ちょっと距離のある死を扱っていて、そこまで感情に訴えてくる感じではなく、ただ「緻密に計算されて組み立てられているなぁ」といううまさを感じる。でも、あとの方になるにつれて、どんどん「身近な人の死」になってきて、電車の中などでは目が潤んで読めない感じだった。

一番好きなのは表題作の「その日のまえに」。
「その日」「その日のあとで」もあってもいいのだけれど、「その日のまえ」で話を終わらせてしまっても完成度が高くて良かった気がする。
妻の死を宣告された夫婦が、結婚してすぐに住んでいた町を訪れ、その頃の貧しかったけれど実は幸せだった頃を振り返る、という話。
できすぎているとも思うのだけれど、重松さんの描き方は細部が上手くて、旨に迫ってくるんだよなぁ。
悲しい気持ちにはなるけれど、今自分のそばにあるささやかな幸せ、今自分の側にいる人の大切さを改めて考えることができるから、こういう作品はたまに読むのはいいな、と思う。
「当たり前」と思っていても、すべてのものには終わりはあるから、もっと一瞬一瞬を大切にしないといけない……という、まぁ、ありきたりなメッセージではあるのだけれど。

ただでも、重松さんの作品を読んでよく感じるのは、小説は技術だけじゃないんだな、ということ。
重松さんの作品はあまりにも緻密に組み立てられすぎてしまって、逆に感情移入を疎外している部分があるように時々思えてしまう。「上手い作家」とは想うけれど、「好きな作家」には入れない理由がそのあたりにある気がする。
そしてそういうところを突き詰めて考えていくと、そこまで上手いものは書けない自分の活路が見いだせそうな気がしたりはする(笑)

 

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