東野圭吾

東野圭吾「宿命」

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宿命 (講談社文庫) 宿命 (講談社文庫)

講談社 1993-07
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結構初期の頃の作品だと思うけれど、はじめからこの人は本当に上手かったのだな、と改めて感じさせられる作品だった。

非常に楽しんで読めた。

小学校の頃から”ライバル”だったふたり。そのうち一人は警察官になり、もう一人はある事件の関係者になる。警察官になった主人公は、元ライバルを疑い、追い詰めていくが、結末では思いがけない二人の”宿命”が明かされる。

文庫本のラストで東野さんのインタビューでのコメントが紹介されていた。

「初期作品のような、殺人事件があって、トリックがあって、犯人はこの人、というような意外性だけの作品では物足りなくなってきました。これならいくつ書いても同じだと思うんですね。まだ試行錯誤の段階ですが、ミステリーではないといわれてもいいから、そいういう作品は避けて通りたいと思っています」

この言葉は、重い。

少し前に東野さんの「探偵の掟」を紹介したけれど、東野さんが、はじめはトリックを命にした「本格推理」を書いていたけれど、次第に「もっと広い意味でのミステリー」を模索し始めたことが、よく分かる。

でも、ピカソやダリは、奇想天外な絵を描きながらも、その基本には誰にも負けないほどの基礎的なデッサン力があった。

ミステリー作家にも、「本格推理」を書く力というのが”基礎力”として必要なのかもしれない、などということも思った。

でも、東野さんの作品を読むと、ミステリーというジャンルの幅広さとか可能性を感じられるのはいいな。
私も書くとしたらあくまで”広義のミステリー”を書きたい。

誰が殺したのか考えるのでも、人を殺して自分が疑われないためのトリックを必死に考える、というのではなく、もっと、「なぜこんなことが起こったのか?」「事件を起こした本人は、どんな気持ちで、どんな必要性にかられてそんな行動に走ったのか?」などを追っていく”ミステリー”がいい。

しかもできれば、その行為に走ったのは、利己的な理由ではなく、”誰かのためだった”という、心温まるラストにつなげられたらいい。

今はそんなことを思いながら、ミステリーを分析しつつ読み、自分の小説の可能性を広げるべく、”広義のミステリー”を書いています。

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