道尾秀介

道尾秀介「光」

道尾さんの小説をまた手に取ってみた。

 

小学生を主人公にした健全で明るい作品

今度は、小学校高学年か中学生の夏休みの宿題の「読書リスト」に入ってしまいそうな、小学生を主人公にした、非常に健全で、明るい作品だった(あ、でも小学生には難しすぎると思うけど)。

すごい、こんな作品も書けるんだ~、と思う。幅、広すぎ。作者を隠して本を渡されたら、当てられないな、きっと。

 

今回は、小学校4年生4人組(+そのなかの一人の姉と、たまに小学校3年生の子が加わる)を主人公にした7つの短編集。

それぞれの章でちょっとした事件が起きて、解決するという構成なのだけれど、すごく大きな事件が起こるわけではなく(最後だけちょっと大きいけど)、基本、日常のほのぼのした出来事が描かれている。

ただそのなかにも、ちょっとしたミスリードが含まれていたり、さらりと書かれているようで構成は凝っていて、そこはさすが道尾さん、という気がする。

 

小学生4人組は、分かりやすく性格が割り当てられている。そういう意味では、自分が小学生のころによく読んでいた子供向けの探偵系の本を思い出す。ただ、やはり心理描写は深みがあり、それぞれの心の動きや痛みが伝わってくる。

子供のころにはすぐ身近にあったはずの自然とか、秘密基地的な場所とか......なんか懐かしい。ときどきちょっと深刻にもなるけれど、みんな純粋で、友情でつながれていて、安心して読めるストーリーだった。

 

「一般読者」に目線を降ろしてきている感じ

「向日葵が咲かない夏」にもファンは多いみたいだけれど、あの結構難解な世界からは、ずいぶん"一般の読者"のところに目線を下げてきているな、というのが一番の感想。

きっとデビューして5年以上経ち、読者の存在をきっと身近に感じるようになってきたのだろうな、などと勝手に想像していたが、twitterを見たら、ファンからの質問にはすべて事細かに答えていて、「おぉ、なるほど」と思った。

その会話を傍で見ているだけでも、気取らなくて、なんか素敵な人だな、と感じた。

 

きっと道尾さんはこれからも、さらに表現力や構成力など腕は磨きつつ、でも目線は"読者"にしっかり合わせて、素敵な作品をたくさん書いてくれるのだろうな、と感じられた本でした。

しばらくいろいろな作品を読んでいきたい。

光
道尾秀介

 

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