エッセイ

「僕たちは島で、未来を見ることにした」

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僕たちは島で、未来を見ることにした 僕たちは島で、未来を見ることにした
株式会社 巡の環 (阿部裕志・代表取締役/信岡良亮・取締役)

木楽舎 2012-12-15
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 日本の「島」が結構好きなのだけれど、行ったことのない島の中で最近、一番気になっているのが、島根県にある「海士町」。

 人口約約2400人のうち、300人ほどが「Iターン者」という、移住者、特に移住する若者が多い島ということで、最近、メディアにも取り上げられる機会が増えている。

 この本は、その海士町に移住し、新しく「巡の環」という会社を立ち上げた二人の書いたノンフィクションの本。
 町長をはじめ、”社外”の人のインタビューもところどころに散りばめられ、著者の二人がどんな思いで東京から海士町に移住を決意したのか、そしてどう島に溶け込んでいったのか、という”移住者側の視点”と、海士町側はどう移住者を受け入れ、見守ってきているのか、という”受け入れ側からの視点”の両方を理解できる本だった。

 海士町は、もともとは少子高齢化も進み、財政破たん目前だったけれど、町長が中心になって自主的な給与カットを行い、その余剰で産業を興こし、岩牡蠣で有名になったところから、島自体が注目されるようになったらしい。
 その後は、積極的に移住者を受け入れ、町全体で、新しいアイディアなどを受け入れるような土壌ができている、とのこと。地域活性に必要なのは、「よそ者・若者・ばか者」だという言葉が印象に残る。

 海士町はIターンやUターンの人を歓迎しているけれど、助成金などを出しているわけではないという。
「本気で向かってくる人には本気で応えようと思っているし、支援もしていきたい。でも、補助金がつくからやらないか、ということは絶対こっちからは言わない。絶対成功しないからだ。
 プロジェクトなりイベントなり、何かやりたいと本気で考えている人と言うのは、最終的には熱意だけで成功に導いていく。金ではない。そう信じているからこそ、何かやりたいという人には情報提供だけは惜しまず、本気の気持ちで応えようと思っている」
 町長の言葉は、深い。

 また、「巡の環」の信岡さんの言葉も心に残った。
 信岡さんいわく、島では「物々交換から始まる」らしい。余ったイカを誰かにあげる、するといつか余った野菜をもらうかもしれない、そんな社会。「うまく交換しにくいものにのみ、お金が使われているというのが、島の感覚なのだ」と信岡さんは書いている。
 でもそういう物々交換の社会では、たとえば「余ったイカを誰にあげよう」というとき、誰にあげるかというと、普段お世話になっている人など、「自分が好意を持っている人」になる。
 だから、そういう社会で生き延びるためには、「島にいてほしい人になる必要がある」と。
 そしてこれは、仕事についても同じだ、と続く。
「これらのお仕事(WEB制作の仕事)も、都会の仕事の始まり方とは全然違いました。
 僕は当初、お客さんにニーズがあって、その解決策を提供して対価をもらうのが仕事だと思っていたのです。しかしこの島では”あいつらは本気で頑張っているから、その特性を活かせる仕事はないか”と、お金が回るための落としどころを村の人が探してくれている。気づけば僕たちのことを、多くの人たちが見守っていてくれていたのです」

 もちろん、見守ってもらえるようになるために、「巡の環」の人たちは、色々な努力をしてきたのだと思うし、そういう人との密な関係は、得意な人と、不得意な人に別れると思うけれど、そういう社会の存在は、興味深く思えた。

 高齢化・過疎化の進む地域にどう若者の力を入れていくか。「ここには何もないから、大人になったら都会に行きなさい」と言うのではなく、「都会で何か身に着けて、ここに戻ってきなさい」と言える場所にどうしたらしていかれるか。
 海士町の試みが、多くの地方地域に刺激を与えるようになっていくといいなと思う。

 海士町は、「五感塾」というものを通して、大企業に教育研修の場も提供しているらしい。企業研修の視察ということで、行ってみたいな~。

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