気になっていたものの、映画館に身に行けなかった映画「PERFECT DAYS」がAmazon Primeで見られるようになっていたので、見た。
ヴィム・ヴェンダースは懐かしい。
大学時代、「パリ、テキサス」とか「ベルリン・天使の詩」とか見ていないと芸術を語ってはいけないみたいな雰囲気があった。
……ように思う。
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今の方が分かるかも
「パリ、テキサス」も「ベルリン・天使の詩」も、面白くないわけではないけれど、面白いわけでもなかった。正直。
当時は、なんか褒めないといけない空気を感じたけれど、私自身は、本当、好きでも嫌いでもなかった。
正直、芸術的すぎて、ちょっと飽きる感じ?
「PERFECT DAYS」も、本当、淡々としている。
地味な年配男性の日常に、芸術的な映像が混ざりこんでいるような作品。
スマホなど、30年前よりさらに刺激が増えた今、これを飽きずに見られる人は、かなり限定されるのではないかと思う。
でも、私自身は歳を重ねたせいか、ヴィム・ヴェンダース作品を大学時代より味わえるようになっているのかもしれないな、と思った。
トイレが綺麗!
この映画の舞台は東京。
主人公は浅草に住んでいて、映画の舞台は浅草を中心に、渋谷など東京の都会。
主人公は公衆トイレの清掃員。
それを役所広司が演じている。
映画の宣伝で「トイレの清掃員」が主人公なのは知っていたから、勝手にある程度イメージがあったけれど、清掃するトイレがどれも綺麗すぎて驚いた(笑)
一時期問題になった鍵を閉めることで中が見えなくなる、外から丸見えのトイレ(確か渋谷にある)や、
他にもこの5年くらいに新しく建てられたであろう最新のトイレばかり。
外国の人に「日本はトイレすらこんなに美しい」という宣伝をしてもらえるのはありがたいけれど、やや美化されすぎているようには感じた。
ただ、それ以外は、とても良かった。
PERFECT の意味
主人公は一人で古い家(アパート?)に住んでいて、毎朝同じように準備をし、缶コーヒーを飲み、古いテープで洋楽を聞きながら車を運転してトイレに向かう。
トイレの掃除をすると、毎日同じように銭湯に行き、同じ居酒屋で夕食を取り、家で眠る。
フィルム式のカメラで木の写真を撮り、家のベランダでは盆栽を育てる。
休みの日には古本屋で本を買って読む。
そんなことを小さな楽しみにしながら、日々を淡々と過ごしている。
オリジナルの掃除道具を作ってしまうくらい、トイレ掃除には真剣に取り組み、
ダメな若者の同僚にも適度な距離感で接する。
「トイレ掃除なんて」という目もときどき入るけれど、主人公は気にしない。
そこがいい。
職業に貴賤はないというけれど、主人公は何に対してもジャッジがない感じがする。
ある意味、禅の心境なのだろうか。
毎日特別なことのない日々でも、ある人から見たら蔑まれるような職業でも、
自分がそこに変なジャッジを加えなければ、人生はとても生きやすいのだと、この映画は教えてくれている気がした。
自分が自分の中心点に入れば、
つまり、人の目とか人の評価から自由でいられれば、
その日々はいつだって「PERFECT」なんだと、とても納得した。
非常に淡々とした作品だったけれど、
それでもじんわりと余韻が残る良い映画だった。
ただ、若い人が見て、いい映画だと思うのはちょっと難しいかもしれない。
だから、もしかすると、
「パリ、テキサス」や「ベルリン 天使の詩」も今見ると、また違うものに感じられるのかもしれない。
そんなふうにも思った。