伊坂さんの「重力ピエロ」が映画になり公開されているので、見に行ってきた。
映画を見るのは久しぶり。
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長編が原作だけどなかなか良い
映画化されて良い小説というのは、長編ではなくて短編だ、というのが私の持論。
今までに見てよかったのは「幻の光」(原作:宮本輝)と「ジョセと虎と魚たち」(原作:田辺聖子)くらいなので......。
短編小説の場合は、それだけを映像化しても足りないから、あとは監督の想像力で「膨らませる」作業になる。でも、長編の場合は、ほとんど「削る」作業だから。
でも、この映画は見て損はしなかった。
確かに「長編小説」を映画化したため、そぎ落とされた部分もあるけれど、その取捨選択が非常にいい。
さらに、小説にはなかった映像だからこそ効いてくるシーンの挿入もしっかりされていたし、ちょっとした間のとりかた、映像の空気感で、伊坂さんの描き出したかったであろう世界が、きちんと表現されている気がした。
謎解きより家族テーマに重き
小説では謎解きのほうに重きが置かれていた気がするが、映画では、謎解きの部分は最低限に抑え、あくまで「兄と弟と、家族の話」に焦点を絞っていた。
だから、繊細な映像とテーマが、すっと心に入ってきた感じ。
「兄」と「弟」を演じる役者も良かった。
伊坂さんの作品は映画化しやすそう
ただ「映像にするのが不可能だと言われていた作品を映画化」みたいなキャッチフレーズをどこかで見た気がするけれど、伊坂さんの作品はそんな「映像化」が難しいように、私には思えないな。
特に「重力ピエロ」は、今までなんて映画になっていなかったの、ってくらいに思う。「オーデュボンの祈り」を映画化する人がいたら、驚くけどね。
それにしても、この映画でも効果的に使われていたが、「はるが二階から落ちてきた」という冒頭の文章は、十年後には、「トンネルをぬけるとそこは雪国だった」くらい有名になって、教科書に載らないだろうか、などと思ったりする。
監督もすごいけれど、やっぱり伊坂さんはすごい!
「ラッシュライフ」もそろそろ公開されるけれど、どんなふうになっているのかな。
重力ピエロ (新潮文庫) 伊坂 幸太郎
新潮社 2006-06 |