上記2冊を読んだ。
Contents
直線の死角
「直線の死角」は、山田さんのデビュー作。
「保険金殺人」というと、非常にありきたりなテーマなのだけれど、ちょっとひねるだけで、新しい切り口になるのだと、学んだ気がする。
ただ、それ以外は、依頼を受けた弁護士が探偵のように事件の真相を探っていくという、類型化した物語。恋愛も絡んでくるけれど、山田さんは普通の"恋愛小説"を書く人じゃないのかもな......と。
正直、あんな完璧に思える作品を書く作家でも、デビュー作から完璧だったわけではないんだなぁ、と、ちょっと安心できた作品でした。
アマゾンでは平均★4つのようなので、こういう作品がいい、という人もいるんだとは思うけれど。
聖者は海に還る
「聖者は海に還る」は、今まで読んだ山田さんの作品のなかではいちばん、「さらり」と読めた作品だった
ひっかかるところなく、先が気になって「一気に読んだ」感じ。
"人は人の心にどれだけ影響を与えられるのか、与えていいものなのか"というテーマにまっすぐ向きあって、書ききった作品だと思う。
一言でまとめると、
「スクールカウンセラーと、一見完璧に思えるカウンセリング手法についての話」
山田さんのどの作品も"先が気になる"エンターテイメントなのだけれど、この作品は特に、先へ先へ読者を促す力を持っている気がした。
ただ、以前、純文学系の作家の人に「一気に読めた、というのがみんな褒め言葉だと思っているようだけれど、それは違う」と言われたことも思い出した。
少し躓きながらも、作者の世界に向き合い、少しずつその世界に足を踏み入れていった作品のほうが、心に残るのかもしれない。
ラストがちょっと中途半端に思えたというのもあり、「黒い春」「天使の代理人」と比べると、「あともう一押し」欲しかった感じ。
ただ、そんなちょっとした物足りなさを感じたり、「よくあるテーマだよね」などと感じてしまうのは、自分自身が長く教育の現場にいて、「教育ってなんだろう」「人は人にどれだけ影響を与えていいのだろう」ということを、ずっと、考え続けてきたからかもしれない。
もしかすると「黒い春」など、私は、「ここまでフィクションにリアリティがあるなんてすごい」と、大絶賛してしまうのだけれど、製薬会社の人などには、「どこがいいの?」と、捉えられたりするのかもしれない。読者の経験によっても、評価って変わるのかもしれないな。
ということで、まだ読んでいない作品はだいぶ少なくなってしまったけれど、読み続けます!
直線の死角 (角川文庫) 山田 宗樹
角川書店 2003-05 |
聖者は海に還る 山田 宗樹
幻冬舎 2005-03 |