この映画の感想を述べるのは難しい。
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アンバランス
部分部分とか、描き出したかったテーマのようなものは、すっごく良かったのだけれど、「あらすじ」では良かったものが「ストーリー」になるとこけてしまった、みたいな印象なのよね……。
細部も、主人公の思う女性「静流(しずる)」の撮った写真とか、彼女(広末)がカメラを構えるシーンとか、ところどころ映像的、空間的にとても美しく、心をつかまれる……のだけれど、一方では、あまりにもさむいギャグみたいな部分もあり、なんともアンバランスで、あれ?……と。
でも全部をひっくるめて、インパクトは充分で、ただ単に「上手くできていた」というものより、ずっと心に残るであろう作品だった。そういう意味ではおすすめ。
好きな人と同じ視点で写真を撮ろうとする切なさ
主人公が静流の撮った写真の風景を求めてNYの街を彷徨い、彼女と同じ視点、同じ感性で写真を撮ろうとするところは痛く、とても良く分かった。
大学時代、写真サークルに入っていた私は、その中のメンバーに密かな恋心を抱いていたりしたのだけれど、そのときの気持ちを思いだした。
好きな人が自分の感性で切り取った写真を見るって、切ないことだと思う。
同じ場所に一緒に行っても、全く同じ風景を見ることはできないのに、写真を見ると、そのときだけ二人の立ち位置が完全に重なる。
あぁ、あの人はここに立って、こんなふうに世界を見、切り取っていたのだと思う。
……でもそうやって重なったと思ったときにはもう、あいだに多くの時間が流れていて、だから完全に重なることはない。
そういう切なさを分かった上で、この映画の主人公も、愛した人の切り取った風景を探し求めていく。そして、自分と彼女を重ねようとしていく。あぁ、分かるなぁ~という気がした。
なのに、大きなストーリーという流れが……悪い。
それに不満は残ったけれど、部分的にはとても好みなのに、全体としてはいまいちという作品に触れると、「私はもっと良く描ける!」と創作意欲が湧く(笑)
そういう意味でも、かなり、見て良い作品だった。