美術

名嘉睦稔「海のふた」展

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名嘉睦稔さんの「海のふた」展に行った。「海のふた」というのは毎日新聞にばななさんが連載していた小説で、名嘉さんはその挿絵を担当していたのだ。私は毎日新聞は取っていないので、良く知らなかったけれど、友達に誘われて行ってみた。
 
 絵は版画なのだけれど、刷った紙の裏側から彩色しているものらしい。裏側からとは思えないほど鮮やかな色づかいだけれど、丁寧に色を付けようという感じではなく、気の向くままに彩色している感じがあり、動きがある。睦稔さんは版画を彫るときも、下絵などは描かず、自分の中にわき出してきたイメージをそのまま彫ってしまうらしい。「自分の作り出したいものを彫るためには腕の動きは遅すぎる」というようなことを本に書かれていたけれど、その言葉が納得できるような勢いが絵にはある。

 沖縄出身で、沖縄の海や風景を多く描いているのだけれど、よく沖縄にいく私には、確かに沖縄の海にはこんなパワーがあると感じさせてくれる絵だった。自分の部屋に飾るにはパワーがありすぎる感じもするけれど、こういう作品を一つ手元に置いて、「表現とはエネルギーだ」ということを忘れずにいられたらいいかもしれない(ただ原画は高くて30万ぐらい……手が出ない……)。

 9日は群馬の保科美術館に行き、日本画を見てきたのだけれど、色々な人の絵を見て思ったのは、一筆一筆を楽しんで描いたと分かるものはいいなということだった。全体を描くために過程として描く一筆ではなく、その一筆のための一筆を積み重ねたようなものに私は惹かれた。変なたとえだけれど、明日のために今日を生きるのではなくて、今日のために今日を生きるみたいな心意気。

 そういうものを名嘉さんの絵にも感じることができたし、私自身も、小説を書くときに、ラストのためのシーンとか、テーマのためのシーンなどは書かずに、一つ一つのシーンや文章、表現を大切にしていきたいという思いを新たにした。

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