嶽本野ばら

嶽本野ばら「パッチワーク」

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 野ばらさんのエッセイ集。

 こんなふうに考えて生きたらつらいだろうなとか、つかれるだろうなとは思うのだけれど、そんな野ばらさんがとても愛おしくなる。そして野ばらさんも、そんなふうに生きづらい他の人のことを全身全霊で愛おしく思い、その人達に言葉を伝えたくて文章を綴っているのだろうなと感じる。

 こんなふうに、誰かに向かって言葉を綴れる作家は素敵だと思う。心から。

 私は野ばらさんのようにファッションに強いこだわりを持っていないし、自分の美意識などを守るために、一人孤高の存在で生きたいとも思わない。だから野ばらさんの価値観をまるごと受け止めたりはしない。

 でも、野ばらさんの変に偏って一途な世界観に触れていると、小説を書きたくなったりする。

 この本で良かったのは、「カルチャーと雑感のフロア」と「乙女と宝飾のフロア」の終わりの方。「カルチャーと……」には映画など人の作品に対する野ばらさんの解釈が書かれていて、とても興味深かった。野ばらさんはこういう視点で作品を見ているのだと分かって。

 あと「乙女……」では、「マイクロフォン」が良かった。本当に伝えたい人は君だけなのに、なぜか世に認められ、自分の声は不自然に拡張されてしまっているという内容。野ばらさんの気持ちが伝わってくる。

 野ばらさんは自分のサイトの日記でも、「君」に向かっていつも語りかけている。

 サイン会に行ったときも驚いたけれど、こんなに読者と近い作家を私は他に知らない。でも、こんな作家が世の中に増えたら、「小説」は今とはまた違ったものになるのかもしれない。それは素敵だ。

 作家としての生き方やスタイルを考えたとき、目標にしたいのは、野ばらさんとばななさん。二人とも本当に、読者のためになにかをしてあげたくて書いているというのが分かるから。読者とつながりあえる作家になりたいな。

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