美術

オラファー・エリアソン「影の光」

久しぶりに美術館に行きました。

品川の原美術館で3月15日まで開催しているインスタレーション.

 

本当の美と出会い、静かに自分の内側を見つめる

大袈裟な言葉に聞こえるかもしれませんが、いやぁ、本当、久しぶりに本当の「美」に出会った感じがしました。

言葉を超越しています。

 

見ているととても穏やかな気持ちになった。

お寺の境内にじっと座っているときの気持ちに似ている。静かに自分の内側を見つめられる空間があった。そして目の前に繰り広げられる光景(というか、光と影の揺らめき)は、美しい数式のように完成された、完璧な軌道を描いたり、この世のものとは思えない不思議な世界を感じさせたりしてくれた。

ここに今生きているということを忘れてしまいそうなほど、非日常の空間があった。

別に今、死にたいと思っているわけではないけれど、自分が死ぬときはこれくらい穏やかな気持ちで、まず生にも死にも属さない場所でしばらくじっと留まり、そしてあの世に逝くのだろうなぁなどということを感じたりした。

本当、良かったです。

 

当たり前すぎて目を向けないために非日常になってしまっているもの

リング状のプリズムを使って、光を虹色にし、その動きを見せるというような展示と、霧に光を当て幻のような柔らかい虹を見せるという展示が綺麗だった。 

 

でも考えてみれば、それはただ普段身近にある光を分解して見せているに過ぎない。

非日常に感じられるけれど、光も様々な色も日常にあふれかえっている。溢れすぎていて気づかない。

 

色だけではなくて、世の中には当たり前すぎて目を向けないために「非日常」になってしまっているものが、今はとても多いのかもしれない。

例えば体の器官の働きとか、物質は原子とか分子でできているということとか、地球は回っているとか、光や音は波であるとか、実感としてとらえられない「事実」は多い。

 

別にそんなことをいちいち考えていたら日常に差し障るから、考える必要はないと思うのだけれど、でも、今回、この不思議な展示を見ながら、実感できないそういう非日常に感じられる様々な「事実」を知識として持ててているのはいいことかもしれないな、なんていうことを思った。

現実世界で行き詰まったとき、白い光の中には本当は七色(本当はもっとたくさん?)の色が隠れているんだとか、物質は全部ただの分子と原子なんだとか、そういう、普段とは全然違う視点をふっと持てるようになれば、気休めであってもちょっと楽になる気がするから。

 

って……何がいいたいかよく分からなくなってしまったけれど、とにかく、本当に良かったです!

静かに美しいものと向き合いたい方、もしお近くに住んでいたら、是非、行ってみて下さい。

 

※写真は2020年に東京都現代美術館で開催された展示のもの。

-美術
-,

© 2024 凪 Powered by AFFINGER5