伊坂幸太郎さん、石田衣良さん、市川拓司さん、中田永一さん、中村航さん、本多孝好さん、六人の恋愛小説を集めた短編集。
なかなか贅沢な顔合わせで、以前から気になっていましたが、ようやく読めました。
読み始めたら一気に読めた。どれが好きかは人それぞれかもしれないけれど、それぞれなかなかいい味が出ています!
Contents
一番好きなのは本多さんの
でもやっぱり上手いなぁと心から感心したのは、本多さんの作品。素敵!
他の作品はどこか作られた幸せという感じで、少年マンガの絵が浮かんでしまいそうだったけれど(特に石田さんの作品とか。ああいうのが好きな人もいるんだろうけれど、私はどうも石田さんの作品の良い読者ではないようだ)、本多さんの作品はとてもリアルだった。
リアルであるだけ、心に迫ってきて、少しつらい気持ちになったり、応援したくなったりした。まぁ、小説になりやすいのは、幸せなときではなく、つらいとき。恋愛の初めより、終わりだというだけなのかもしれないけれどね。
中村さん・伊坂さんの作品
あとは、中村さんの作品は初めて読んだ。
名前は聞いていたけれど、読んだのは初めて。なので、普段どういう作品を書いているのかは分からないが、これはなかなかパワーがあって良かった。
金城さん(「GO」とか「Fly,Daddy,Fly」とか書いた人)っぽい世界だった。
あぁ、男の青春ねぇ、って感じだけれど、女でも問題なく読める。ちょっぴり女の書き方にリアリティがないといえばないが。
それから伊坂さんも「秘密」(これも短編集)で読んで、二度目。嫌いじゃないなと思う。ただ、括弧のつかいすぎが少しうるさく感じられてしまった。そこが気にならない人には、適度にユーモアがあっていいと思う。
石田さん・市川さん・中田さんの作品
石田さんの作品は作り物っぽかった。でもおもしろくは読める。分かりやすいしね。
一カ所夕焼けを説明するのに、「ファンタ・オレンジほど深くはないが、バヤリースよりも濃いくらい」と書いているのがちょっと素敵に思えた。
文学者とかに言わせたら、こういうことを書くから現代の小説は薄くなるんだとか言いそうだけれど、私はこういう今っぽい軽やかな表現は好き。
市川さんの作品は市川さんっぽいなぁとも思ったけれど、その分、新たに練られた感じではなく、いつもの感じすぎてちょっと新鮮味が薄れてきたというのもあるかも。でも嫌いではない。
でもなんで市川さんはいつも見た目があまり整っていない人とか、もてないタイプの人間を養護するようなものを書くのだろう......と気になりはする。
中田さんは名前を聞いたのも初めて。でも、結構おもしろかった。これもまたマンガっぽいのだけれど、ところどころ結構リアルで分かり、そこがちょっと痛かったりした。
と、あまり参考にもならないことをだらだら書いてしまったけれど......個人的には結構好きな本。そして本多さんの作品がやっぱり一番だ!!ってことだけ書いて、とりあえず締めます。
恋愛をしたくなるような、過去の恋愛の痛みをちょっと思い出すような、そんな一冊でした。
人を思う気持ちって、時に美しく、時に残酷だなぁと、ありふれた感想なども抱いたりして。
I LOVE YOU (祥伝社文庫)
祥伝社 2007-09-01 |