話題になってからだいぶ経ってしまいましたが読んだ。
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劇団ひとりの世界がそのまま小説になっている
文章力があるとか、文学的だというのとは違うけれど、おもしろかったし、上手かった。
上手いのは、キャラクターの作り方かな。ストーリーでも文章でもテーマでもなくただひたすらキャラクター。
有名人が本を出すと、ゴーストだとかよく言う人もいるけれど、これは劇団ひとりというお笑いの人が、そのお笑いの世界を追究しているうちに生まれた副産物という感じがして、誰にもゴーストだと言わせないぞという彼らしさが満ちていた。
この本を読むことで、普段からこの人は、すごい一生懸命、笑いとかおもしろさを追い求めているのだろうな、という「プロ意識」を感じた。
そうやって日々積み重ねてきたものは、お笑いという形で舞台に乗ってもいいし、小説という形で出版されても同じことなのではないか、というように思った。
だからこれは処女作ではあるけれど、初めての「デビュー」ではないという感じがした。
文学ではなくお笑い
多分この本は、たいていの人に「おもしろい」と受け入れられると思う。
ただ、「文学」を読み慣れていて、そういうものを求めて手に取った人には、「ちょっと違う」と思わせるものではあるかもしれない。
各ストーリーには落ちがあるのだけれど、「わざわざそんな無理して落ちをつけなくても良かったんじゃない?」というのもあれば、「そういう落ちはよくあるよね」というのもある。
そういうところで、「これは文学じゃなくて、きっとお笑いなんだよな」と、自分を納得させないといけない部分などもあった気がする。(でも、2つくらいは落ちが良かった)
上手く言えないけれど、本をあまり読まない人には、「おもしろかったから読んで」と勧められるけれど、文学仲間には勧められないって感じかな。
ただ、私はありきたりの人間しかあまりかけない人なので、「キャラクターを作る」という意識はとても学べて良かった。
多分、二作目を出したら読むだろう、というくらい気に入ったし。
劇団ひとりは一人ネタをやっているときは近づきたくないほど変な人だけれど、「純情きらり」ではすごい魅力的な人になっていたし、なんか興味をそそられる人ではあるなぁ。今後も期待。
陰日向に咲く 劇団ひとり
幻冬舎 2006-01 |