決して前向きな明るい話ではなく、どちらかというと、暗い気持ちになってしまうような話なのだけれど、それでも、ぐいぐい先へ先へひっぱっていく物語の力に導かれ、非常に楽しく読めた本だった。
Contents
人はどんなとき人を殺すのか?
テーマは、「人はどんなとき、人を殺すのか」。
主人公は子供の頃からそんな「人を殺す心理」に興味を持つ。
彼が、唯一継続して殺意を感じるのは、小学校時代からの「友達」だった。
この小説のストーリーの核は、結局主人公はその「友達」を殺すのか。
でもこの「友達」、相当な曲者。
非常に小賢しい。
ただ、非常にむかつく奴で、主人公の人生はそいつの存在のせいで、何度も狂わせられるので、読者もその「友達」に殺意に近いものを感じたりするのだけれど、それでもどこか憎みきれない、少し複雑なキャラクターが、非常に巧みに描かれている。
緻密に組み立てられた作品
細かい部分まで気を遣って、精密に組み立てられている作品だった。
私は、基本的には、もっと人の善意を信じられるような作品のほうが好きだけれど、こういう作品は、はらはらしながら楽しんで読めていい。
先が気になる小説が手元にあるときは幸せだ。
そして、こういう、人物を細かく丁寧に書き出した、ストーリーより人物に重きを置いた小説を読むと、しばらくその登場人物たちのことが、読み終えたあとも気になり続けてしまう。
殺人の門 (角川文庫)
角川書店 2006-06 |