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喜多川 泰「「また、必ず会おう」と誰もが言った。」

以前、電車の広告で見て、素敵なタイトルだなと思い、メモしていた本。

今年に入って時間がようやくできてきたので、過去数年分の「気になっていたもの」に手を出し中。

 

文学ではない。自己啓発小説

小説なのに「サンマーク出版」?

と思っていたけれど、確かに、"文学"ではなかった。

いっとき流行った「夢をかなえるゾウ」みたいに、自己啓発っぽい内容が小説になっているといったほうが、「文学」というより近い。

 

あまり描写や言葉の選び方には神経が使われていず、ストーリーもかなりご都合主義で作られている。

そういう「なんちゃって小説」はどうも嫌いなのだけれど、途中で作者が学習塾を創設した人ということを知り(途中で著者略歴を見た)、そこから俄然、評価は上向きに(笑)

 

作者が今の子供たちに伝えたいことがまっすぐ書かれている

主人公は熊本の高校生。ひょんなことから一人で東京に出てきて、飛行機に乗り遅れ、お金もないし、帰れなくなってしまう、というところから物語は始まる。

そして、色々な人と出会い、助けられながら、また、出会った大人から様々なことを学びながら、家まで帰るというストーリー。簡単にいっちゃえば。

でも、主人公が大人たちから学ぶ一つ一つのことは、作者が本当に今の子供たち(もしくは子供を育てる大人たち)に伝えたいことなんだろうな、ということが、読むうちにじわじわと伝わってきた。

それはまた、10年ほど塾業界にいた自分が伝えたかったこととも、重なる。

特に共感したのは、子供の持つ無限の可能性を引き出すために必要なのは、信頼してくれる人がいるということと、待つことだという部分。

私自身は3つの塾で仕事をし、就職活動では10社以上の塾を回ったけれど、教育に大切なのは生徒を信じて待つことだと教えてくれた人のいる塾もあれば、「教育に一番大切なのはなんだと思うかと聞かれ、『生徒の成長を信じて、待つこと』と答えた私に、『待っているだけじゃ、ダメでしょう』と、あきれたように言った人がいた塾もあった。

なんか、そんなことを思い出した。

 

心に残った言葉

そのほか、いくつか心に残った言葉を。

あなたにとって居心地のいい場所は、まわりの人があなたに何をしてくれるかによってじゃなくて、あなたがまわりの人のために何をするかによって決まるの。

学校というのは、持つ必要のない劣等感を持たされる場所でもあるからね。他の人が何かを達成したとか、認められたという経験がそのまま、自分を否定されたような気持ちになりやすいんだろう。でも、実際はどんな人だって、誰かの喜ぶ顔を見たい、そのためならなんだってできるという一面を持っているんだ。それに気づいたら、その一面を大切にしたほうがいい。

一人ひとりには、そいつに合ったメガネがある。(略)他人のメガネをかけて世の中を見ている奴に限って、この世は生きにくいとか、苦労が多いとか、いいことがないとか、平気で口にする。ワシに言わせりゃ当たり前じゃ、そんなもん。いつまで他人のメガネで世の中を見てんねんって言いたい。

わけもわからず、他の人が幸せやと言うてるものを追い求めたり、他人が持っているものを手に入れようとするんが人生やないで。

できすぎていると思いながらも、読んだ後、ちょっとあたたかい気持ちになることもできる本だった。

子供に読ませてもいいけれど、子供と接する大人が読んでもいい本だと思う。

映画化も予定されているらしい。

「また、必ず会おう」と誰もが言った。「また、必ず会おう」と誰もが言った。
喜多川 泰

 

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