「となり町戦争」でデビューした三崎さんの二作目の本。
短編集だし、それぞれ長さもまちまち、世界観もバラバラで、一冊で一つの話になっている「となり町戦争」に比べると、少し読むのに苦戦した。
視点などはおもしろいし、テーマも感じられる。ユニークな作家だと思う。
ただまだ発展途上という感じがしなくもない。型にはまってしまってもつまらないけれど、もう少し三崎さんのワールドというものが固まってきたら、もっと読みやすく、おもしろくなってくるのでは、と勝手に思った。
短い話は、星新一を思わせる作品だった。意味が分からないまま話が進み、ところどころでくすっと笑え、そして最後に不気味な印象だけ残る。一番初めの「二回扉をつけてください」などはそんな感じだった。
一番心に残ったのは「動物園」かな。これは「中編」くらいの長さはあるから、途中少しだれてしまったところもあったけれど、動物のイメージとか、主人公の心とか、きちんとつかまえることができた気がした。
この本は、発表された順に並んでいるようだし、最後の二作がその「動物園」と、似たように情緒的な「送りの夏」なので、作者はこういう方向に進んでいるのかもしれない。だったらまた次の作品も読んでみたいな、と思えた。
三崎さんは、発想はエンターテイメントだけれど、書き方は純文学に近いものがあるような気がする。
そのバランスの取り方も、今後見守っていきたい要素。......と、なんか偉そうに書いちゃった(笑)
バスジャック
集英社 2005-11-26 |