桜木さんは、「ホテルローヤル」が直木賞を受賞したとき、ちょっと読んでみたのだけれど、図書館で借りてしまったので、期限に間に合わず、やむなく途中で返却……。
ただ悪い印象はなかったので、改めて読んでみたら、これは、かなり良かった。「ホテルローヤル」は途中までしか読めていないので、語る資格はないけれど、読んだところまでと比べると、「蛇行する月」の方がいいくらいだと思う。
これは6人の女性の話を組み立てて1つの作品にしたもの。
ただ、今はやりの(?)「連作短編」ではなく、もっと6つの話だからこそ浮かび上がってくるものがある「長編小説」なんだろうな。
ちょっぴり頭が弱くて、20歳以上も年上の和菓子職人と駆け落ちし、子育てに追われ、貧しく暮らしている女性が、それでも「しあわせ」と言い切れるのはどうしてなのか?
その女性の同級生、和菓子職人の元妻、母親などの視点から物語がつむがれていく。
ただ、その女性が6話すべての「主役」ではなくて、6話それぞれの主人公の女性の生活の中に、ちょっと絡んでくるような構成。
その絶妙な絡み方と、その女性とコンタクトを取ったあと、6人それぞれがちょっと変化する、その「ちょっとさ」が絶妙で、良かった。こういう変化はあからさま過ぎると、作り物くさくなっちゃうから。
これを読んで、桜木さんが気に入り、最近文庫本が発売されたばかりの「風葬」も購入。現在、読書中。でも、「風葬」よりも、やっぱり、「蛇行する月」の方がいいように思う。