レビューにはまだ2作品しか載せていなかったようだけど、窪さんの本はかなり読んでいる。
ちょっと心が痛くなるのだけれど、最後には嘘くさくない救いもあって、そのバランスが、とても好み。
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勝手な分類では、角田光代さんに近い
私の勝手な分類では、窪美澄さんの作品は、角田光代さんのに近い。
でも、角田さんの作品をさらに繊細にしたのが窪さんの作品、というイメージ(本当、私の勝手なイメージ)。
窪さんの作品には、細部にまでものすごい神経が張り巡らされている、緻密に組み立てられた世界を感じる。だからこそ、窪さんの作品は、長編より短編の方が好きかも。
(多分、繊細さは短編の方が似合う。長編には、もうちょっと大胆さが要る。きっと……)
「水やりは……」は短編集
この『水やりはいつも深夜だけど』は、6つの短編を集めたもの。
それぞれに植物の名前が付けられていて、その植物が小道具(?)として、印象に残るように設計されている。
最後の2作は高校生の話だけれど、残り4作は、小さな子供がいる「母親」か「父親」の話。
まだ小さな子供を育てる家庭の、きわどいバランスというか、アンバランスさが非常にリアルに描かれていて、同じくらいの年齢の子供を持つ人間としては、読むのがちょっと辛い部分もあった。
でも、最初にも書いたように、窪さんの書く作品は、最後にはちょっとした光がある。だから、続けて読める。
一番心に残ったのは……
一番心に残ったのは、「ゲンノショウコ」かな。
知的障害のある妹のいる主人公が母になり、自分の子供が他の子よりも発達が遅いのではないかと心配する話。
一番痛い話だったけれど、その分、妹と線路で遊んだことを思い出すシーンの力がすごいと思った。
最後の2作
最後の2作は高校生の話。
父親が再婚して、新しい母親と3歳の妹ができ、その生活に慣れようとがんばる女の子の話が5話目。
そして、その女の子の同級生の男の子(心臓に病気が見つかり、運動ができなくなる)の話が6話目。
窪さんは、1~4話の「親」世代だと思うけれど、高校生の揺れ動く気持ちも非常にリアルに、そして瑞々しく書かれていて、良かった。
ただ、たまたまこのあたりと、瀬尾まい子さんの『そして、バトンは渡された』の最初の方を平行して読んじゃっていたので、頭がちょっと混乱した(^-^;
(両方とも、家庭が複雑な高校生の話なので)
そして、同じように複雑な家庭を描くんでも、タッチの違いが、こんな世界観の違いを産むんだなぁと興味深かった。
(瀬尾さんは、複雑な家庭の話を、「別に、私にとってはそれが普通だし」という感じに、軽やかに書く。デビュー作からそこは一貫している。
『そして、バトンは渡された』 の感想はまた後日……)
まとめ
ということで、まとめると、この本も窪さんの上手さをすごい感じる本でした!
ただ、窪さんの本を読んだことがない人には、デビュー作であり、代表作でもある『ふがいない僕は空を見上げた』を勧めるかな。
そして2番目は『晴天の迷いクジラ』。で、三番目がこれかな。
窪美澄
「水やりはいつも深夜だけど」