岩井俊二監督の最新作を見た。
岩井俊二監督の作品は、大学時代~20代の頃、よく見ていた。
- undo
- Love Lette
- 打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?
- PiCNiC
- FRIED DRAGON FISH
- スワロウテイル
- 四月物語
- リリイ・シュシュのすべて
- Jam films「ARITA」
- 花とアリス
と、2004年までの監督作品は全部見ている。
個人的には、純文学的世界観の「undo」(ストーリーはあまり重要でなくて、赤い糸に絡まっていく山口智子の姿が印象的)と、岩井監督の中でも一番心が痛くなる「 リリイ・シュシュのすべて 」が好きだった。
ただ、30代になってからか、 「 リリイ・シュシュのすべて 」 を見直したら、心に響かなくなっていて、驚いた。
自分の中に、そういう痛みと共鳴するものが枯渇してしまったんだ、と思った。
(今見たら、また違う感想を抱くかもしれない)
Contents
あれから25年後の「Last Letter」
「Last letter」は、岩井俊二監督の代表作とも言える「Love Letter」と、タイトルが似ている。
別に続編ではないのだけれど、「Love letter」で主役を演じた中山美穂と豊川悦司が出てくるあたりにも、つながりを感じる。
だから、なんとなく 「Love letter」 世代の人間は、「あれから25年かぁ」なんて思いながら見てしまう部分もある(多分、それを狙っている)。
結果として、それはすごい成功しているな、と思った。
若いころには切実だった心の痛みは、年を重ねると段々薄れていく。でも、完全に消える訳ではなく、どこかに眠らせている痛みがある。
その、長年眠らせているうちに、いい感じに角が取れてきたガラスの欠片のような“痛みだったもの”が、ちょうどいい塩梅で表現されている映画だなと思った。
ただそれは、単純に受け取り手の私が、もはや切実な心の痛みをもっていないから、キーンと響くような痛みを感じられなかっただけなのかもしれない。今、痛みを持っている人には、もっと切実に響くものなのかもしれない。
それは分からないけれど、私にはそんなふうな作品に感じられた。
役者がいいなぁ
主要人物の福山雅治も、出番は少ないけれど、重要な人物である豊川悦司と中山美穂も、決して「美化」されていず、とてもリアリティのある存在感だったのも、良かった。
福山雅治は、あまり格好良くない役をすると、「上手いなぁ」と思う(笑)
やや蟹股っぽい、格好良くない歩き方も、きっとわざとなんだよなぁ。すごい。
豊川悦司は久しぶりに見たけれど、豊悦はやっぱり豊悦だった。
また「Love Letter」も見たくなった。近いうちに見よう。
手紙のやりとりと構成
あと、この作品では、色々な次元での「手紙」のやりとりが取り上げられている。
高校時代の「姉」への「先輩」からの手紙。
そして40代になって再会した「先輩」と姉を偽る「妹」との手紙のやり取り。
さらに「先輩」と「姉の娘」の手紙のやり取り。
主要な文脈ではないけれど、「義母」と「元先生」の手紙のやり取り。
電子的に、瞬間的に言葉が伝わる今の時代だからこそ、このまどろっこしいやりとりが、とても温かく感じられる。
日本郵便も、もっとそういう温かさが伝わるCMを作れば、手紙を出す人も増えるのかも(笑)
まとめ
この1か月くらい、いくつかレビューを書いてみて気づいた。
いい作品ほど、「いい!」としか言えない(おい(^^;))
うまく整理できない、心の奥がかき混ぜられたような感覚……そういうものを残してくれるものが、私にとってはいい作品なんだな。
すぱっと「泣けた!」「励まされた!」「やる気が出た!」みたいなものは、私は求めていない。
だから、いい作品ほど、伝える言葉が減る。
つまり、私はレビューを書くのに向かないのだろう(笑)
ということにも気づいたけど、自分が触れた作品と、そこから感じたことが、今の自分を形作っていると思うから、その欠片を大切にする意味で、多分私は、触れた作品とその感想を残していくだろうと思う。
最後にまとめれば、岩井俊二監督はやっぱり好きだ! 以上。
「Last Letter」
(岩井俊二監督)