映画(か行)

映画「彼女がその名を知らない鳥たち」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

沼田まほかるさんの同名小説の映画化。

小説は読んでいないのだけれど、過去に沼田まほかるさんの小説を読んだときに感じた世界の感触と、映画を見ているときに感じたものは似ていたから、かなり忠実に原作世界を表現したものだと思う。

 

一言でまとめてしまうと、「暗くて、重たい」

ストーリーを超ざっくりまとめると……

「心から愛していた、お金もあり、容姿もいい男性に8年前に“捨てられた”女性の物語。

女性は今もその男性への想いを断ち切れないまま、二十歳近く年上の冴えない中年男のひも状態で暮らしている。

毎日家事もせず、ごろごろ暮らし、店にクレームを入れるのを楽しみにしているような、腐った生活。

その女性がまた“いい男”と出会い、いい関係になりかけるけれど、同居する中年男性の邪魔が入る」

みたいな話。

 

登場人物は「なんか嫌だ」と感じる人だらけで、絶対この世界の住人にはなりたくないと思う。

それでも最後まで見てしまうのは、それだけの力が作品にあるから。

それは、この世界の元を作った沼田さんの力であり、映画を作った監督や脚本家の力であり、そして役者の力。

 

特に主人公の蒼井優と阿部サダヲの演技がやばい!!

ちょっと前に「ハチミツとクローバー」の映画を見て、はぐみ役が蒼井優だったことに「あぁ、なるほど」と納得したのだけれど、それとのギャップが大きすぎて、衝撃!

本当に力のある役者なんだろうなぁ。

前半の、ものすごい「腐った女」具合がリアルだった。

 

見ていた世界がひっくり返る

たまたまだけど、前回感想を書いた「カノン」と同じく、この映画も終盤、物語の見え方がひっくり返る。

「彼女がその名を知らない鳥たち」は“ミステリー”と括れなくもない作品なので、ひっくり返し方は、「カノン」より見事。

そして、終盤の短い時間で見せるので、そのあたりはテンポが良くて、見ている側は、“あぁ、そうだったのか”と同時に、感情も揺すぶられる。

 

先にも書いたけれど、この小説は本当、悪い人と変な人だらけで、“うわぁ”って思う。

特に主人公に共感できな過ぎて、げっそりする。

でも次第に、少しずつ理解できていってしまう、このストーリーがすごいな、と。

阿部サダヲが演じる冴えない中年男に対しても、最初は主人公と同じように“きもい”としか感じられないのだけれど、最後は変わってくる。

  

20年くらい前、書いた小説を友達に“いい人が一人も出てこなくて、読むのがしんどい”みたいに評されたことがあり、「彼女がその名を知らない鳥たち」を見ながら、なんとなくそのことを思い出していたのだけれど、ラストに思い知った。

力ある作家は、ちゃんと意味があって“いい人が一人も出てこない”状況を描き出しているのだ、と。

 

後味爽やかで、“見てよかった!”と手放しで思える作品ではないけれど、その分、心の奥に残り、“いい作品だったな”とじわじわ感じられる映画だった。

ハリウッド系より、カンヌ系の映画が好きな人にお薦めな作品。

  

彼女が名前を知らない鳥

ちなみに映画では最後に鳥が飛ぶシーンがあるだけなのだけれど、原作にはカラスが頻繁に登場するらしい。

映画だといまいちタイトルの意味は分からなかったので、原作も読みたいと思った。

ただまほかるさんの作品は、小説だとより一層エネルギーが必要になるので、元気な時にちょっとずつ読みたい(笑)

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る