実践重視の「小説の書き方」系の本を以前何冊も読んだ。
そこから得たものももちろんあったけれど、今はもうそういう段階に自分はいないという自負があるので(逆に、今は型にはまるということの方がすごく怖い)、そういう本は手に取らないようにしている。
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スキルより心構えが書かれている
でもこの本は実践というより、もっと「心構え」のような抽象論なので、それなりにおもしろく読めた。
まぁ私は保坂さんの「書きあぐねている人のための小説入門」の方が好みではあるのだけれど。
この本を読んで得た一番のものは、具体的にこういうところを気をつけて書かなくてはいけないということではなくて、「書くことには常に真摯に向き合いなさい」というメッセージ。もう、それに尽きる気がする。この本のテーマ(主張)はそれ以上でも、それ以下でもないだろう。
書き出しは……終わりは……題名の付け方は……人物の名前の付け方は……と話は具体的だけれど、つまりは、一つ一つすべてに神経を使うべきだということなわけだ。
私も「純文学」(死語かもしれないけれど)と言われるような作品を長く書いている人間なので、ここで書かれていることの8割方は自分でも考えたことがあるし、気をつけているつもりでもいる。でも例を出されて「ここはこういう工夫がされている」などと示されると、「自分では気をつけているつもりでしたが、その心がけはまだまだ足りませんでした!」と謝りたくなってしまう(笑)
印象に残った個所
それ以外、細かい部分で「なるほど」と感じたのは以下の部分。
1,題名がネガティブなものは作品全体も小さくまとまった駄作になる可能性が高い。
2,書きたいものではなく、書きたいことを書く(設定やストーリーのおもしろさに飛びつかず、自分の内的な必然性を大切にして題材を選べというようなことだと思う)。
3,本は買って読むことによって、そこから学ぶことができる(いい作品を読み返せるというだけでなく、気に入らないものを買ってしまった場合も、なぜそれにその値段の価値が見いだせないのかその理由を考えることができるから、らしい。なるほどねー)。
小説を書く行為は、作曲しながら演奏するようなもの
あと、一つ面白いなと思えたのは、「小説を書くという行為は、作曲しながら演奏をしているようなものだ」という部分。
初めの方、人物の設定を作り、それが分かるように説明的な部分を書くのは「作曲」、それ以降は、人物が自然な流れによって動いていく。それが「演奏」。保坂さんの言っていた「音楽性」と重なる話だけれど。
しっかり構成を立てないと書けない人には分からない話かもしれないけれど、私はやっぱりこういう感覚、分かるなぁ。
ただ、書き手はただの奏者になってしまってはいけなくて、指揮者としての視点をキープしていなくてはならないのだろうな、とも感じる。
と、まぁ、色々刺激にはなりましたが……結局どうすれば自分の文章は上達するのだろう? 自分に足りないものって何なのだろう? という疑問に対する答えは得られず。……ま、自分で考えていかなきゃね。