中国人の監督・侯孝賢が、小津安二郎の「東京物語」を意識して作った作品で、主演は一青窈と浅野忠信。
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日本の良さが描き出せている
以前好きだった劇作家の平田オリザさんも小津に影響を受けたと言っていたし、淡々とした日常を切り取る作品というのは、多分私の好みなのだろうと思うのだけれど、小津作品を未だ一度も見たことがない。絶対見ないといけないなぁ、と今日、改めて思った。
この作品は、外国人のスタッフで作ったとも思えないほど、上手く日本や、日本の良さを描き出せている作品だと思った。
風景や、特に光に対する感性がとても優れていて、私の好みだったし、その美しさは、日本らしい美しさのように思えた。
一青窈もとても自然で良かった。こういう作品には変にオーラのある「役者」という感じの人より、彼女みたいな人がいい。
まぁ、でも、演じている彼女は「普通にいい」というレベルだったので、「普通よりもいい」と感じさせる音楽でやはり勝負していった方がいい人なのだろうとは思った。正直に言うと。
そして、浅野忠信はとてもいい役者さんだと思うのだけれど、ちょっとこういう作品では存在感がありすぎるかなぁという気はした。
設定がいい加減……?
雰囲気とかイメージの上では問題なく、良い作品だった。
そして、ストーリーがあまりない、展開がほとんどない、というのも、まぁ、いい。
でも、でも!!!
あまりに設定がいい加減な感じがした。なんて言うかなぁ、人と人との関係とか、その人が何をして生きている人なのかとか、そういうあたりに説得力がない。
以前私は、「ストーリーなんて二の次。イメージを書きたいだけだから」と公言して作品を書いていたのだけれど、あぁ、自分の作品もきっと、こういう気持ちを人に与えていたのだ、と初めて分かったような気がした。
まぁもちろん、私の以前の小説より、この映画の方がずっと出来はいいと思うけどね。
ということで、見たら見たでそれなりに癒されるし、心地よいので、それなりにいい映画だ。でも、「是非見て」と勧められるほどのものではない気がしてしまった。