嶽本野ばら

嶽本野ばら「ミシン2 カサコ」

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 ほんと、野ばらづいております。

 ということで、これは野ばらさんの新刊(といっても、三ヶ月ほど前に発売された)。デビュー作「ミシン」の続編。

 正直、「ミシン」は苦手な作品だった。パンクなバンドの話で、「う……」と固まるような「歌詞」がところどころ書かれていたり、そんな展開あるか? という展開だったり……なんかやりすぎで苦しい、という気がしてしまった。

 それに対して、「ミシン2」はすんなり受け入れられた。もしかしたらそれは、私がそれまでに野ばらワールドの洗礼を受けまくったからかもしれないけれど。受け入れられないと思った、「ミシン」に出てきた歌詞でさえ、「ミシン2」の後半に出てくると、染みてきた。

 野ばらさんの書く作品の世界は、決して深かったり広かったりしないのだけれど、なんだろう、心の部分だけが異様に深くて、読んでいる人間の心の奥にまで反響する何かがある。「独特の世界」なのに、全然奇を衒っているようには見えなくて、ものすごく単純明快なことだけが書かれているような感じがする。いい意味で。
 
 でも決して真似できないし、真似しようと思っちゃいけない作家の一人だろう。
だから私は野ばらさんの作品を好きで読んでいるけれど、そこから表現者として学ぼうとは多分、思っていない。そしてだからこそ、純粋な読者として楽しめるのかもしれない。

 この作品は、「下妻物語」のように女同士の友情(?)を描いたもの。「下妻」の関係の方がすぱっとしていて、私は好きだけれど、これはこれで良かった。特に最後の方。
 
 女同士の友情って、どこか嘘くさくて、計算高い。女はそれを知っている。だから、こんなにきれいな友情の話は、多分、女には書けないだろうな……という気がした。野ばらさんが「乙女」の心を持っていることは認めるけれど、いい意味でやっぱり野ばらさんは男だなぁと思った(変な書き方……)。

 あと、やはり深刻なトーンのなかにも「下妻」のようなギャグセンスもあって、随所で笑わせてくれる。それも素敵!

 良い作品でした。

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