映画(た行)

是枝監督「誰も知らない」

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 やっと見られました!

 柳楽くん見たさで行く人も多いと思うけれど、私はずっと以前から是枝監督のファンです!……と、一応、ミーハーじゃないことを宣言しておきます(笑)

 この映画は良かった。ドキュメンタリーを撮ってきた是枝さんらしい描き方をされた「ドラマ」だった。
 
 実際の事件を元にしたとは言っても、「父親の違う四人の子供が母親に置き去りにされた。四人とも戸籍もなく、学校にも通っていなかった」という部分だけがノンフィクションで、その兄弟の年齢設定や、映画の中で起こる出来事は作られたものらしい。でも、様々なところに「リアリティー」が感じられ、「フィクション」を作る者の意識の持ちかたを学んだ気がした。

 内容は、とにかく重い。涙が溢れるような悲しさではなく、どうにもならないもどかしさと、深い部分での痛み。子供たちが無邪気に笑えば笑うだけ、観ている側は切なくなる。誰か、気づいてあげて。何かしてあげて。と思うけれど、自分が彼らの側に住んでいたら何かできただろうか? 彼らの存在に気づいたら、具体的な行動を起こせていただろうかと考えると、何もできないように思えてしまう。

 映画の中で長男は知り合いの大人に「警察や福祉施設に行った方がいいんじゃない?」と言われるが、「そうすることでややこしいことになったことがあるので、いやなんです。四人で一緒に暮らせなくなるから」と答えている。そう言われて、彼らを施設に連れて行かれるのだろうか?

 ただ、コンビニの残りのおにぎりをあげるお兄さんや、お金を貸してくれる人など、彼らの生活を助ける人がところどころ存在するのだけれど、そういう安易で表面的な「救い」が、彼らを根本的な救出から遠ざけているのではないかという気がした。

 これは「社会問題」としても、重いテーマを感じさせるし、それと同時に、人の「幸せとはなにか」という抽象的な問題も投げかけてきているような気がした。
彼らの母親は、新しい恋人のところに行くために、彼らを置き去りにするのだけれど、そのとき長男に、「(あんたの父親は勝手に出て行った)どうして私だけが幸せになってはいけないの?」と言う。この気持ちも分かる。

 でも、自分の子供と過ごす時間は幸せではないのだろうか? こう言われた長男は、「じゃあ、自分の存在って何なの?」と感じただろうな、それって痛いだろうな……。
 でも、母親だって人間だし女だから、そういう幸せをすべて奪われなくてはいけないというのもおかしいよな。

 幸せになるのって、ある意味では簡単だけれど、ある意味では難しい。多分、いつも。
 身近にあるもので幸せを感じられたらいいのに、それ以外を望むと、幸せはすぐに遠ざかっていく。

 とにかく、重いけれど、いい映画だった。確かに柳楽くんは観る価値がある。つらい設定の割には明るいシーンやきれいな映像も多いし、登場人物の行動などに本当に説得力がある。説得力というかリアリティ。

 表現者としても、学ぶところが多い映画だった。

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