映画(あ行)

ヴィタール

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 塚本晋也監督の最新作を見てきました。

 とても不思議な印象の映画で、ストーリーよりもイメージや映像優先という感じの作りでしたが、退屈することもなく、浸れました。ベネチア国際映画祭で、スタンディングオベーションが十分とか二十分とか続いたと言われているけれど、それも納得できる密度の濃い作品でした。

 映画に娯楽性やテーマを強く求める人には向かないかもしれないけれど、映像で出来る表現とは何か、とか、そもそも表現の価値というのはどこにあるのかということを考えている人には是非見てもらいたいと思う。

 ストーリーは簡単に言うと、交通事故で記憶をなくした青年(浅野忠信)が、以前目指していた医学の道に戻り、医大での解剖実習を通して、自分の過去やその事故で亡くなった恋人と向き合っていくというもの。

 夢と現実のシーンが交錯し、慣れるまでどれが「現実・現在」なのか分かりづらいけれど、基本的には「現実」の解剖実習の場面が続き、そこに様々な記憶や過去、妄想(?)などがクロスしてくるという感じ。

 青や緑、赤の色味を強くして、わざと映像から現実味をそぎ落としているので、すべてが実在しない、現実ではないもののように思え、おもしろい。

 人は現在、過去どちらを生きているのか。現実と空想のどちらを生きているのか。そんなことを考えさせられるような作品だった。

 あと、塚本監督は以前から「肉体」に興味を持ち、十年も解剖学の本を読みあさっていたとか、この映画のために医大生の解剖実習を見学させてもらったとかいう気合いの入れよう。

 やはりそこにこの映画のエッセンスはある。

 私は事故や手術の話など聞くのがとても苦手なのだけれど、人の体には結構興味がある。筋肉とか骨を緻密に描写している図鑑などを見ると、ちょっとわくわくする。「人体の不思議展」にも二度目行ってみようかと思うくらい。

 だから本当にそういう人の体のグロテスクなところが苦手という人には、この映画はつらいかもしれないけれど、そうでなければ、かなり興味深く見られると思う。

 感動した、泣けたというのとは全く違うけれど、おすすめの映画です!

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