邦画

映画「キッズ リターン」

北野武監督の作品。

 

しみじみと良い映画

ものすごく前から気になっていて一度も見るチャンスがなかった映画。

でも、あ~、今見られて良かったな、きっと違う精神状態の時に見たら、こんなストレートに北野武の伝えたかったことを受け取れなかったかもしれない、と思えた。
なんだかとても今の気持ちにしっくりと来た。

 

ものすごく淡々とした作品だから、「これはものすごくいい!」とか激しい感情を持って薦める感じではないのだけれど、あ~いい映画を見たなぁと、余韻に浸れるものだった。

 

成功と挫折と成長という変化

内容は、高校で落ちぶれていたシンジとマサル、二人の成功、挫折、成長を描いたもの。

シンジはボクサーに、マサルはやくざになり、違う道を歩み始めるが、心の内にどこか複雑な感情を抱きながらも、お互いのことを信じ、大切に思い合っている様がうかがえる。

 

決して二人ともがそれぞれの世界で成功する「ハッピーエンド」ものではないし、二人の変化はそう分かりやすく描かれてはいない。

でも、何かが確実に変わり、その変わった二人が久しぶりに出会い、高校時代と同じように自転車の二人乗りをする。そこに、やわらかい未来の光を感じるのは決して深読みではないだろう。

 

特に、映画のチラシのキャッチコピーに使われ、「この映画がいつかみたい」と私にずっと思わせ続けてくれていた二人の会話のやりとりが、最後の最後にとても効果的に使われていて、染みた。

どんなキャッチコピーかは内緒。そんなすごく凝った台詞ではないのだけれど、そのさり気なさ、重い挫折のあとの軽さがいい。

 

少しずつ手に入れていく成果

他、喫茶店のウエイトレスにあこがれる純朴な高校生とか、漫才師を目指しているクラスメートとか、二人とは直接関係のない人たちの成長や変化もさりげなく散りばめられている。

様々な人がいて、様々なことに悩み、それでも必死になっているうちに、少しずつ成果を手に入れていく。……人生ってそういうものだなぁと感じられた。

 

本当、分かりやすく「努力すれば夢は叶う」なんてお話では決してない。

でもだからこそリアルな一人一人の成長が心に残った。

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