邦画

映画「カノン」

Amazon Prime Videoで「4.5」以上の評価を探して見つけた映画。公開時は全然知らなかったな。

前回投稿した「恋は雨上がりのように」やその前に投稿した「WOOD JOB」とは違い、かなりシリアスな人間ドラマ。

でも、色々なジャンルの高評価作品を見ていくというのも面白い。

 

トラウマ解消映画

内容はすごく簡単にまとめると、三姉妹が母親から受けた虐待(に近い環境)のトラウマを克服する話。

自分たちを育ててくれた祖母が亡くなり、遺言で、亡くなったと聞かされていた母親がまだ生きていると知る。

書かれていた住所を尋ねると、そこは施設で、母親はアルコール中毒による認知症になり、入所している。母親は、三姉妹のことを自分の娘だと認識もできない。

幼い頃、母は酒に溺れ、三姉妹をまともに育てられなかった。三姉妹は母をただ恐れ、そして憎んでいた。

生きていると知り、尋ねた先でも、三姉妹は母にその怒りをぶつけることもできない。そんなやりきれない状態から映画は始まる。

 

そのあとも、唯一結婚している長女は夫からモラハラを受けているとか、祖母の料亭を引き継いだ三女はその精神的負荷から、母と同じようにアルコールに手を出し始めているとか……絶望的な情報が続く。

 

視点が変わると、世界が変わる

でもこの映画の優れているところは、中間地点あたりで、がらりと世界がひっくり返ること。

娘の視点で過去の出来事を見たとき、そこには「酒に溺れる弱い母親と、その被害に遭う娘」というストーリーしかない。

でも、母親の視点で見たとき、そこにはまったく違うストーリーがある。

そのストーリーが語られ始めてから、世界は急に立体的になっていく。

それが、とても良かった。

 

小説でも『藪の中』に始まり、視点が変わるとストーリーが変わる、ということを提示する作品は複数あるけれど、この映画の視点の変え方も見事だった(この映画の場合、視点人物はずっと三姉妹だから、視点が変わったというのは正確な表現ではないかもしれないけれど)。

 

鈴木保奈美や女優がすごい

そんな多面的なストーリー展開をするこの映画で重要なのが、三姉妹の母親役。

それを鈴木保奈美が演じている。

鈴木保奈美って、「東京ラブストーリー」のヒロイン役というイメージが強すぎて、そのあとあまりテレビで見た印象がなかったけれど、本格的な女優になっていて、びっくりした。

三姉妹もそれぞれ良かったけれど、あの母の存在の前には、かすむくらい。

50歳の頃の作品だから、結婚当時のシーンはやはり違和感はあるけど、アル中になってやつれ、狂気に取り憑かれ、さらに認知症になり……という演技が鬼気迫っていた。

 

また、最後のシーンは、ほとんど台詞がないのだけれど、母親と三姉妹の心のへ化が、目配せや表情、小さな動きだけで伝わってきて、その演出も、演技も良かった。

あざとくない、抑え気味の表現がやっぱり好きだな。

 

母の過去を辿るというストーリーはよくあるけれど、これは頭一つ抜き出ていたように思う。お薦め。

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