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万城目 学「鴨川ホルモー」

気にはなっているけれど、あとひとつ、その本を手に取るきっかけがない、という本がある。

この本も、そのうちの一つだったのだけれど、会社の人に貸してもらったので、読んでみた。

普通の大学生が「ホルモー」をする話

なんだかすごいタイトルだし、表紙の絵もふざけているし、映画化もされたようだけれど、出回っているそのシーンも奇妙だし......きっと、コミカルではあるけれど、非常に難解な作品なんだろうと思っていたが、読んでみると違った。

「ホルモー」というのは、明らかに架空の「競技」で、その内容も、その競技に関わる人たちも、非常に奇妙なのだけれど、その競技以外は、本当にどこにでもいそうな大学生と、どこにでもありそうな大学生活が描かれていて、意外と普通に読めてしまう。

以前、「学校生活というのは、誰でも経験したことのあるものだから、小説で書いても、新しさを出すのが難しい。だから、学校を舞台にした作品はあまり書かないほうがいい」とアドバイスされたことがあるけれど、この小説の場合は、「ホルモー」があまりに特異だから、その舞台は、非常にありきたりな「大学生活」でなくてはいけなかったのだろう。

 

読んだ後に「どんな話だったっけ?」と思う人はいない

文庫のあとがきに「(この本を読んだけれど)鴨川ホルモーってどんな話だったっけ、と言う人はいない」と書かれていた。確かに、そうだろう。

「だって、ホルモーといったら、あの競技でしょ?」「だから、鴨川ホルモーと言ったら、そのホルモーをする学生たちの話に決まってるよね」

と、読んだ人の頭ではすぐにつながる。

でも、この「一度読んだら、タイトルを聞くだけで内容を思い出せる」ほど強烈な作品を作り出せる、というのは、作者の力だ。

「絶対、こんな競技、ないよね?」と思いながらも、自分の大学でも、誰かしらが細々とホルモーをしているのではないかと思えてしまう(まぁ、私の大学は、京都にはないので、その時点で、設定から外れていますが)。

 

うそつき力

万城目さんの魅力は「うそつき力」だという評論家がいたけれど、上手いネーミング。

うそつき力は、「奇抜なアイディアを思いつく力」と「奇抜なアイディアにリアリティを持たせる力」両方がないと成立しない。

この本を読んで、自分に足りないのは、常識的な世界を打ち壊す発想力だな、と痛感した。

読書好きにも、物書き好きにもお勧めの一冊。

鴨川ホルモー (角川文庫)鴨川ホルモー (角川文庫)
万城目 学

 

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