去年の「小説すばる新人賞」受賞作を読んだ。
現役の大学生(今までは、女子高生や女子大生が多かったけれど、男の子)が書いた青春小説ということで、TVなどでも話題になっていたから、気になってはいたけれど、正直、そう期待はしていなかった。
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ちょっと読んで衝動買い!
ただ、本屋で数ページ読んで、滅多に単行本など買わない私が、衝動買いしてしまった。
ものすごい引き込まれた。途中まで読んで、「うわぁ、すごいなぁ」と思い、最後まで読んでも、やっぱりよかった!
賞の傾向をつかむために、新人賞受賞作は結構読むのだけれど、デビュー作でこんなに満足感を味割ることは滅多にない気がする。
私の密かな自慢は、デビュー作を読んで「この人は、今後活躍する」「この人は、この1作だけだな」という読みが大体当たること。
朝井さんも絶対、書き続けていく人だな、と思う。
焦って変な2作目を出してはほしくないけれど、次の作品が楽しみ!
ただ、こういう「若い感性」をずっと保ち続けていかれるのか、それとも、ある時点で作風を変えるのか、20代後半以降の方向も気になるな。
構成もいいけれど、何といっても描写力
と、がーっと書いてしまったけれど、どんな作品かというと、5人の同じ高校の生徒の視点から書かれた5つの短編集。
タイトルの「桐島」は、バレー部のキャプテンなのだけれど、桐島はバレー部の生徒の視点で書かれた1つの短編のなかの回想シーンに何度も登場するだけで、あとはちょっとした会話の端に現れるくらいしか出てこない。
ただ、「桐島」が部活をやめることによって起こった小さな変化を、それぞれの生徒の視点で描いていき、最後には、なんとなく1つの作品にまとまっている。
この、「え? 桐島って結局、それしか登場しないの?」という驚きの構成もすごいけれど、この作品の何がすごいって、描写力だと思う。
文学っぽい、きどった描写じゃなく、若者の方言混じりの日常的なコメントが、心に響く。
きっとほとんどの人は、自分の高校時代を思い出すんじゃないかな。
自分の高校時代には携帯なんてなかったし、随分違うんだけど、心の中にあるうまく表現できない痛みとか迷いみたいなものは、いつの時代も共通なのだろう。
お薦め!!!
桐島、部活やめるってよ 朝井 リョウ
集英社 2010-02-05 |