さだまさしの小説は好きで、今まで出たもの全て読んでいる。
これも、とっても良かった!
大好きな「精霊流し」「解夏」に並ぶ傑作。
Contents
「命」というものを多角的に浮かび上がらせる
高校時代の友人がきっかけで心の病にかかり、徐々に回復している若い男性の話。
父親の紹介で始めた、亡くなった人の遺物整理の仕事の様子と、高校時代の友人との出来事が交互に繰り返される構成。
「命」というものを多角的に浮かび上がらせるその構成や、登場人物の配置、ストーリーなど秀逸。
作者の心持ちは作品に出る
ただ、それ以上に素晴らしいと思うのは、「これを書いた作者は、本当に心がきれいな、あったかい人なんだなぁ」ということが端々から感じられること。
ちょっとした表現とか台詞とか、物事の設定とかそれに対する感想に、書く人の価値観とか心は、否応なく入り込むものだなぁ、とこの作品を読んでいて思った。
こういう心の美しさは、「フィクション」だといったって、決して飾れない。
だからこそ、物語の根幹ではない、ちょっとした枝葉末節の言葉遣いとか登場人物が抱く感想に、心が震える。
自分ももっと、文章力ではなくて、人間力みたいなものを磨かなくてはなぁ、と思わされた作品だった。
少し心に痛みを感じるところもあるけれど、全体的に透き通った感じの作品で、最後はきちんと報われる、安心して読める作品なので、是非、多くの人に読んでもらいたいと思う。
アントキノイノチ (幻冬舎文庫) さだ まさし
幻冬舎 2011-08-04 |