すごーく前、伊豆文学賞をもらったときに副賞としてもらった「新潮の100冊」のなかに入っていて、なんか捨てられずにいた本を今更ながら読んでみた。
宮部みゆきは(って、なんで宮部さんだけ、呼び捨てなんだろう。メジャーになりすぎると、「さん」をつけづらくなるのか? 三島由紀夫「さん」とか、太宰治「さん」とかも変だし、そういう意味では、宮部みゆき、東野圭吾などは、文豪なのか??)、5~10冊くらいは読んだことがあるけれど、「ちょっと苦手」な部類の作家だった。
なんというか、「あぁ、エンターテイメントを量産している作家ね」という感じで。
でも、これは違う。
なんで宮部みゆきが山本周五郎賞?と思っていたけれど(山本周五郎賞を受賞した作品は結構好き。なんというか、ちゃんと心に届く作品が多い)、読み始めて、分かる、分かる、って感じ。
まだ量産していなかった初期の作品だからなのかな。文庫本で600ページ近い大作なのだけれど、一つ一つの言葉にしっかり想いが込められているのが分かる。
この作品は、「失踪した甥の婚約者を、休職中の刑事が探していく」という物語なのだけれど、その奥に、カード破産という日本の闇が描かれている。
そこの描き出し方に、非常に情熱を感じるし、「自己破産する人は、本当にだらしない、ダメな人なんですかね? その人以上に、このカード社会の仕組みに問題がないですかね?」という問題提起が心に迫ってくる。
この作品は、もう20年以上前の作品だけれど、その後問題になった「グレーゾーン金利」の問題などが鋭く指摘されていたりする。この作品がきっかけで、社会的な法整備が進んだんじゃないか、と思われるくらい。
本が売れないという時代、専業作家として食べていくためには、1年に何冊も本を出さないといけないのかもしれないけれど、こういう良質な作品を、じっくり腰を据えて書ける本当に筆力のある作家が増えないと、日本の文学は廃れるよ……、なんて思ったりした。
本当、宮部みゆきのイメージが、がらりと変わった本でした。
宮部みゆきを読んだことがない人は、まずこの『火車』を読んで欲しい!