その他ミステリー

藤野 恵美「ハルさん」

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娘の成長を見守る父親のほのぼのミステリー


 殺人事件などは起こらない、ほのぼのミステリー。

 娘が小さいうちに妻が亡くなり、ほぼ男で一つで娘を育てた人形作家が主人公。その主人公(ハルさん)が、娘の結婚式に向かう途中で、幼稚園時代・小学校時代・中学校時代・高校時代・大学時代、それぞれの娘との思い出を振り返る形の連作短編集。


 それぞれで起こる事件は、幼稚園時代なら「同じ幼稚園の園児の卵焼きがお昼寝の時間に無くなった」など、本当にささやかなもの。

 でも、作者は児童文学出身者でありながら、自身は本格ミステリーの大ファンというだけあり、細かい伏線がたくさん仕掛けられていて、それがしっかり最後に回収される心地よさがある作品。

 5つの事件とも全部、人の悪意ではなく、善意が空回りして”事件”になってしまったようなもので、解決すると、”あぁ、そうだったんだね。良かった”という気持ちになる。

 ほっこりした気分になりたいとき、安心して読める作品。主人公の娘が、1編ごとに成長していく姿も微笑ましい。

 5つの事件を読んだあと、結婚式のシーンにつながるので、今まで育ててきた娘が巣立っていく結婚式のラストシーンも、ハルさんの気持ちに共感できる。

 いわゆる「ミステリー」ではないけれど、時々はこういう趣向のミステリーも楽しいなと思える作品だった。

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