今年、「いい作家を一人見つけたぞ!」という手ごたえを感じられたのが、綾瀬まるさん。
窪美澄さんの名前に惹かれて買った「あのころの、」というアンソロジーのなかで出会い、「この人、すごくない?!」と思い、単著をamazonで探し、購入。
窪さんもそうだけれど、綾瀬まるさんも「女による女のためのR-18文学賞」から出てきた人みたい。
あまり性的描写は好きではないけれど、エロくなりすぎず、美の一部、作品の一部として性的シーンを描くにはかなりの力量が必要なわけで、そこをしっかりこなせる作家は、実力のある人なのかもしれない。
ということで、「女による女のためのR-18文学賞」出身作家、けっこう注目かも。
「あのひとは蜘蛛を潰せない」には、性的な描写はなく、28歳の女性主人公の心情をかなり緻密に書いている。特に母親との関係。
途中、ちょっとその関係性とか、恋人との語り(恋人も家族に対して複雑な感情を持っている)がちょっと面倒に思えるところもあるのだけれど、それも含めて、なにか一つの確かな世界が描き出されている感じがした。