それ以外の本

レイチェル・カーソン「センス・オブ・ワンダー」

以前からタイトルだけは聞いて知っていたのだけれど、図書館のお薦め本コーナーで見つけ、初めて読んでみた。

作家で海洋生物学者であるレイチェル・カーソンのエッセイ集。

レイチェル・カーソンは『沈黙の春』という環境破壊に警鐘を鳴らすノンフィクションでも有名だけれど、この本は、「自然は美しい」「自然は素晴らしい」ということが、とてもピュアな心で書かれている本だと感じた。

訳もいいのだと思うけれど、読んでいるだけで、自然のなかで深呼吸しているような気分になる。鳥の声や波の音が聞こえ、潮の香りが漂い、目の前を小さな虫や生き物が横切っていくのを感じる。

 

センス・オブ・ワンダーとは

センス・オブ・ワンダーとは、直訳すると「驚く感性」となる。何に驚くのかというと、前述した「自然の美しさ」や「自然の素晴らしさ」に。

作者は、まだ小さな姪の子供を自然の中に連れ出し、そこで一緒に「自然」を味わい、自然に驚く。

作者は言う。

「植物や鳥の名前を教えることよりも、自然の美しさに驚く感性を教えることの方がずっと価値がある」

あぁ、本当にそうだな、と思う。

本当の教育って、好奇心を芽生えさせることだ。興味さえ湧けば、子どもも大人も、勝手に学び始める。

この本は図書館では「高校生の推薦図書」と書かれていたけれど、これを読むべきは大人だ。これから小さな子供を育てるべき大人。

 

地球の美しさと神秘さを感じ取れる人は ……

この本は、「もっと書き足して膨らませたい」という願いを叶えられないまま作者が亡くなってしまったということで、かなり短い、コンパクトな本なのだけれど(写真などが入って賞味50ページくらいなので)、そのなかにも心に響く文章はたくさんある。

特に響いたのはここ。

地球の美しさと神秘さを感じ取れる人は、科学者であろうとなかろうと、人生に飽きて疲れたり、孤独にさいなまれることはけっしてないでしょう。たとえ生活のなかで苦しみや心配ごとにであったとしても、かならずや、内面的な満足感と、生きていることへの新たなよろこびへ通ずる小路を見つけ出すことができると信じます。

結局思うに、これだけ文明が発達し、目まぐるしく色々なものが動く現代、自然のささやかな変化に目を向けられる人というのは、心に余裕がある人なんだと思う。

エイブラハムは多分、そういう余裕ある状態に心を保てるように瞑想しましょう、と言っている。

自然の豊かさに目を向けることは、瞑想と近しい。瞑想というか、自分の内にある深い静寂とつながることに。きっと私たちの心の奥底には、自然の一部としての“生物”としての根本の力がある。

だから、自分の心の奥底に潜れば、それは、自然と深く結びつくことにもなる。

 

普段から都会のなかにいても、瞑想するなり、心を落ち着け、ソース(人の力を超えた力)と調和するような生活を送っている人なら、自然豊かな場所に行ったとき、特に意識することもなく、自然の細やかな変化や美しさに気づける。

また、普段から自然豊かな場所で、自然を愛でる生活を送れている人は、ソースとのつながりがしっかりとしているから、慌ただしい都会に出てきても、心を落ち着けたまま生きることができる、ということなのだろう。

どちらであれ、そういう良い心の状態を保てている人は、現実で大変なことがあっても、そう簡単にはダメにならない。

「 内面的な満足感と、生きていることへの新たなよろこび 」が、心のなかにいつも宿っているから。

 

もう一つ、素敵な言葉

もしもわたしが、すべての子どもの成長を見守る善良な妖精に話しかける力をもっているとしたら、世界中の子どもに、生涯消えることのない「センス・オブ・ワンダー=神秘さや不思議さに目を見はる感性」を授けてほしいとたのむでしょう。

この感性は、やがて大人になるとやってくる倦怠と幻滅、わたしたちが自然という力の源泉から遠ざかること、つまらない人工的なものに夢中になることなどに対する、かわらぬ解毒剤になるのです。

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