洋画(米)

「1917 命をかけた伝令」

珍しく戦争映画を見た。

前編ワンカット?!

「全編ワンカット」が売りの映画なのだけれど、レビューサイトのコメントを見ると、「ワンカット」でないことはバレバレ(笑)

一番の売り文句が“広告に偽りあり”なのは、ちょっと残念な感じがする。

ただ、普段あまり「どうやって撮っているのか」ということには意識が向かないので(内容に集中しちゃう)、これは映像に集中できる映画という意味では良かったかな。

飽きるわけではないけど、ストーリーに意外性はなく、ひたすら「伝令」を届けるために走る、という内容なので、さほどストーリーを追うことに頭を使う必要がない。

だから、「ワンカット風」ではあるけれど、長回しが多く、凝った映像世界を楽しめる。

(編集点が随所にあるとしても、これだけの人数が登場し、これだけの仕掛けがある舞台を超長回しで撮るには、かなりの計算と技量がいるのは確か)

 

映像は確かに美しい

この映画は両親が子どもを預かってくれているあいだに旦那と観たのだけど、旦那の感想は「驚くほど読後感がない」(笑)

旦那の意見には賛同できないことが多いのだけど、この感想だけは、言いえて妙だと思った。

すごい労力や予算を掛けて、ものすごいたくさんの人を巻き込んで作品を作っているのは分かるのだけど、そして確かに広く世界で公開されるのにふさわしいクオリティのものには仕上がっているのだけど……けど、けど……という作品だった。

確かに、戦争で燃えた建物の描写とか、爆撃で光る廃墟を夜に走るシーンとか、束の間の民家でのひとときのシーンの美しさとか(ちょっとだけ、大学時代にはまったソクーロフの映像を思い出したな)、川の流れに呑まれるシーンの激しさとか……見ごたえのあるシーンも多い。

ただ、「ワンシーン(風)」ではなく、もっとストーリーとか心情描写とか、なにか他の核となる良さがあって、それプラスの映像美だったら、もっと良かったなぁ、というのが感想。

表現手段には、映画だけでなく、小説とか絵画とか写真とか色々あるけれど、映画の良さは、やはり映像と物語の融合だと思うんだよなぁ。

ま、好みの話かもしれないけど。

 

一番印象に残ったのは

物語の主要部分ではないのだけど、私の印象に残ったのは、桜の木が全部切り倒されているシーン。

敵が撤退したあとの、のどかな民家が点在する土地に、根元から切り倒された満開の桜の木が二十本くらい倒れている。

それを見て、ひとりが「ひどいな」と言うと、家がさくらんぼ農家だというもう一人が答える。

「でも、種がたくさん落ちているから、将来、これよりもっと増えるよ」

これが救いの言葉なのか、何なのかわからないけれど、「読後感」があったとしたら、このシーンと言葉のように思った。

(これも非常に個人的な感想。ここに注目する人はあまりいなそう)

 

戦争映画でいいのは

基本、ハラハラドキドキするのは疲れるので、あまり戦争映画とかアクション映画とか好きじゃないんだけど(お化け屋敷も嫌い)、やはり名作と言われる戦争映画には見逃せないものもある。

私が好きな戦争映画は

硫黄島からの手紙」「シンドラーのリスト」「ブラザーフッド」かな。

 

今、上記3つの映画について書いた自分の記事を読みなおしていたら、「ブラザーフッド」のところにこう書かれていた。

そして設定と役者の存在感をより強めたのが、映像の力だった気がする。戦争のグロテスクなシーンを丁寧に撮っていたこと、映像が登場人物の心情描写にもなっていたこと、歴史的な背景もしっかりとふまえた撮影場所を選んでいたこと。

良い作品というのは、様々な要素の相乗効果で生まれるものなのだということを痛感させられた映画だった。

16年も前に書いた記事だけど、結局「映像」と「設定」の相乗効果があってこその「良い映画」だと私は以前から考えているんだなぁ。

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