京橋(東京)にあったブリヂストン美術館が建て直され、今年「アーティゾン美術館」として生まれ変わった。
ブリヂストン美術館の常設展には好きな展示もあり、生まれ変わっても素敵な作品を見せてくれるだろうという期待の元、足を運んでみた。
(そのため、鴻池さんの名前は知らなかった)
Contents
幅広い
鴻池さんの一番の関心は、「生き物」にあるようなのだけれど、制作物の範囲は幅広い。
普通の「絵画」があれば、鳥をモチーフにした凧のようなものもあり(展示室内に複数の凧が飛んでいる)、動物の毛を敷物にしたようなものとか、砕かれた鏡を組み合わせて作った火山みたいなものとか……なんか様々。
雑多なんだけれど、でも、展示空間全体がまとう空気感はちゃんと制御されている感じで、面白かった。
とりあえず言葉を重ねても伝わらないので、写真を貼り付けておく。
本当、インスタブームのおかげで、ほとんどの美術館が「撮影OK」になっていて、ありがたい。
これは幅10メートルくらいの大作。
写真で見てもきれいだけれど、本物も、はっと息をのむ美しさだった。
最初に入った部屋の中央には、どんっとこんな“装置”がある。曲線状の階段を上った先は滑り台。そして、その空間を取り巻くのは襖絵。
そんな大きな展示物の脇には、様々な立体&平面作品が。
これは実物は幅20センチくらいかな。そんな大きくない。
でもガラスを砕いたものを継ぎ合わせて作ったようなオブジェは光を乱反射させ、凛とした美しさがある。
他にも、こんな影絵の仕組みを使った作品も。
光と影の使い方にも関心が高い人なのかな。
絵画作品もたくさんあったけれど、私が一番目を引かれたのはこの人。
よく見ると顔の右側は獣の毛に侵略されてきている。
鴻池さん流のもののけ姫なのか? 「生きろ!」という声が聞こえた気がした(笑)
動物の「なめし」業者(職人?)と交流があり、色々な動物の毛皮が送られてくるみたいな説明文があり、毛皮やらはく製やらが密集しているエリアがある。
芸術と見るか、残酷と見るか、面白いと見るか。どうとでも捉えられる作品だな。
鴻池さんの世界は、美しいけれど、不気味でもある。
前回見た「ピーター・ドイグ展」にも通ずるものがある。
「私はいつもエネルギーのことを考えています」
私は美術を解説無しで見るのも好きだけれど(あまり意味とか考えたくない)、時々、作家の言葉にはっとすることがある。
鴻池さんの言葉は力強く、特に下記の文章に惚れこんだ。
私はいつもエネルギーのことを考えています。
絵でも彫刻でもなんでも、ものづくりは、バラバラだった素材や思考が完成に近づくと途端に世界が閉じて保守的になり、安定をし始めます。
そこで私の場合、あえて完成間近なものに、異質な裂け目のようなものを穿って不安定にさせ、大きくバランスを崩します。
ドローイングなら邪魔な線を加えるか、もしくは重要な部分を消し去るとか、絵の天地を逆転するとか、台無しになるような無慈悲なことをしてしまいます。
なぜならその不均等を埋めようと、作品の深部に一気に爆発的なエネルギーが興り、それが今の安定した次元を突き破り、変貌を遂げようとしてくれるからなのです。
制作の博打が毎回繰り返され、エネルギー変換を経て作品はさらに強度を持ち、完成へと向かいます。
そんなまるでダム発電のようなことが、日々の制作過程で起こっています。
保守的に安定する、というの、分かるなぁ、と。
「ちっちゃくまとまる」ことを防ぐためにできることのヒントをひとつ、もらった気がした。
まとめ
展示スペースとしてはさほど広くないのだけれど、様々な作品が、様々なワールドを作り出していたからか、かなり密度濃く楽しめる展示だった。
明後日(10月25日)で終わってしまうので、「お薦め」と言っても、なかなか身に行ける人は少ないだろうけれど、都合がついたら是非!
基本、ネットでの事前予約制(でも、当日でも入れそうだった)。
美術館自体も非常にきれいになっていて、良い空間。