東京都現代美術館で開催されている「坂本龍一 音を視る 時を聴く」展に行ってきた。
ただこの展示の感想を書くのは、とても難しいな。
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映像作品が多く、鑑賞時間は結構かかる
作品数は12点と美術展にしてはとても少ないのだけれど、一つの作品が一つの部屋、というくらいの規模なので、全然少ない感じはしない。
特に映像作品が多く、一か所で7分×2種類、11分×2種類など上映されているので、真面目に全部見ようとすると、3時間くらい掛かるかもしれない。
私は普通美術館に行くと1時間くらい鑑賞するのだけれど、今日は珍しく2時間くらい経っていて驚いた。
映像の多くは「ダムタイプ」の高谷史郎さんとのコラボになっているが、海外の映画監督などとのコラボ作品もある。
音を「立体的に聴かせる」
美術館と坂本龍一(音楽)というと、なんかちょっと組み合わないような感じもするのだけれど、
坂本さんは生前、東京都現代美術館のための展覧会構想を遺していて、今回はそれを元に行われた展示だった。
つまり、坂本さんの意志と関係なく、むりやり美術館に作品を持ってきたわけではなく、
坂本さん自身に、「音をもっと立体的に聴かせたい」という想いがあり、以前から映像とのコラボレーションなどに力を入れ始めていたということらしい。
ただ、心に残る展示もあったけれど、最終的に私が思ったのは、
「音楽単体で味わった方が、良さが発揮される気がする」ということだった。
6番目の展示は、広い部屋で大型スクリーンに映像が写り、スピーカーも数多くあって、非常にイマーシブな体感があるものなのだけれど、
音が良いので、しばらく目をつむって音楽だけ味わってしまった💦
坂本さんの音楽は、映画音楽としてもとても良いから、そういう「コラボ」(というのか?)は成功しているわけで、
それ以外に何がしたかったのかなぁ、と考えてしまった。
そして思ったのは、きっとこれはまだ完成形ではなく、試行錯誤の過程だったのではないかな、ということ。
坂本さんはガンになってから、少しずつ終わり支度をしてきたみたいに書いているのをどこかで読んだけれど、
それでもやっぱり、本当はもっと行き着きたい先があったんじゃないかな、と感じてしまった。
そして私自身も、これからどんどんAIが活躍の場を広げるであろう未来に、坂本さんはどんな活動をしていくのか、見たかったなとも思った。
映像とのコラボでひとつとても良かったのは、11番の展示。
電子ピアノが坂本さんの曲を演奏し、その曲に合わせて高谷さんが創った映像が壁に映し出されるのだけれど、
それだけでなく、ピアノの前のアクリル板に昔の坂本さんの後姿の映像が映り、まるで今、坂本さんが実際に演奏しているかのように見えるようになっている。
その風景と音楽に、なんだか胸がぎゅっとなった。
人はやっぱり、上手で無機的な演奏ではなく、人の心の入った演奏が聴きたいのかもしれない。
展示に行く場合のお薦めや注意点
もしこの展示に行く場合は、2点注意が。
1つ目は、現代美術館のサイトにこう記されていること。
展示室内の安全を保つため、週末は入場制限を行います。それに伴いチケット販売を一時休止する可能性があります。ついては平日午前のご来場をおすすめいたします。
私は平日午前に行ったけれど、それでもまぁまぁ混んでいて、「これ以上混んでいたら結構キツイな」というレベルだった。
週末は混雑覚悟で行った方が良いかも。
2つ目は、可能ならジーンズなどで行くと良いかも、ということ。
映像作品が多いのだけれど、座れるベンチのようなものは非常に数が限られている。
物によっては立って見ることも可能なのだけれど、
その部屋を通過して次の作品に行かなくてはいけない、という場所での展示も多いため、
「見る人は、ここで見てください」と指定され、座らざるを得ないことも多い。
短時間ならしゃがんでみることも可能だろうけれど、
じっくり作品を見ようとすると、結局美術館の床にお尻をついて座るしかなくなってくる(^^;)
なので、服装は結構注意!
(私はプライベートはいつもジーンズだから、ノープロブレムでしたけどね)
最後にいくつか画像・映像を
今回の展示は、静止画は全部OK。二つの作品だけ動画撮影がNGだった。
ただ、暗いなかでの展示なので、カメラによってはなかなか撮影が厳しいかも。
私も一眼レフを持って行かず、スマホだけだったので、良い写真は撮れなかったな。
一眼レフがあっても綺麗に取れたかは分からないけれど、
2番目の、水槽に水が落ちてくる展示は、
水面と同じ高さにしゃがみ、じっと水面を見ていると、弾ける水が非常に綺麗で、音も小さいながらも響き、
非常に美しい作品だった。
それが撮れなかったのはちょっと残念だけれど、撮れなかったからこそ、心に残ったような気もしている。
一応、撮れた写真と動画を。
8番目の展示風景。
7番目の展示
複数のIphoneとタブレットで映像+日常の音を再生し続けている。
同じタイトルの本
と、色々味わえたものの、全体としては理解しきれなかった感じがして、
最後にミュージアムショップで売っていた坂本さんの本を購入。
もう30年くらい昔にされた対談を収めた本らしいけれど、今回の展示と同タイトルだったから、何かヒントになるかもしれない。
『音を視る、時を聴く[哲学講義]』
ま、こちらもまだ読めていないので、何とも言えないけれど……
でも、理解できるものだけが自分の糧になるわけじゃないんだよな、とも思う。
むしろ、もやもやっとしたつかみどころのない感覚ほど、自分の奥にしっかりと届き、残るのかもしれない。
そんなことを思った美術展だった。