少し前に話題になった本。「さくら」というのは犬の名前だということだけ知っていたから、犬が中心になった話だと思ったけれど、それ以上に「家族」の話だった。
兄と僕と妹、三人が子供の頃から成長していく過程が書かれている。......なんていうと、そんなに面白い本に思えないかもしれないけれど、この本は、かなり良い!
家族の温かさとか、愛が伝わってくる。というより、しみ込んでくる。
最近、こういう温かい愛の話(それも、恋愛小説というより、家族小説みたいの)に弱いなぁ。それだけ年取って来たってことか(^^;)
Contents
ドラマチックでないのに読ませる力
「さくら」もこのあいだ読んだ「今、会いにゆきます」と同じように、いや、それ以上に、長編のわりには大してドラマチックなことが起こるわけでもなく(まぁ、ないことはないけれど、もちろん)、全体的にゆったりと「日常」が描写されている小説。それでもこれだけ飽きさせずに読ませる、それが才能だよなと思う。
以前は結構売れている小説を読んでは批判していたけれど、最近は素直に、いいものは売れているよなぁ、とか、やっぱり感性とか才能っていうものは存在するんだなと感じる。
この「さくら」の作者も、相当才能のある人だ。ちょっとマンガっぽく大げさな感じに作られた「キャラクター」は感じてしまうけれど、でも、あぁ分かる分かるという範囲のことを書きながらも、しっかりと読者をひっぱっていく。視点と文章の書き方が上手いのかな。
私はミステリーなどは書きたいと思わないけれど、こういう「さくら」とか「いま、会い」とか瀬尾まいこさんの作品とか、そのあたりのあたたかく愛に満ちたエンターテイメントを書けるようになりたいな、と切に思う。この頃。
心温まる作品を読みたい人に
この小説は、前半はとても明るく、ただもう幸せというのはこういうものだということを照れずに書き表している感じ。
後半はちょっとつらくなる部分もあるけれど、読後感も悪くない(まぁ、あまりストーリーが分かってしまうことは書きたくないので書かないけれど)。380ページある割に、結構すらすら読める。
心温まるものを読みたいなと思っている、心がひねくれていない方にはおすすめの一作です。
さくら (小学館文庫)
小学館 2007-12-04 |