「すばる文学賞」受賞作。
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書くのも読むのも根気がいるような作品
「白の咆哮」は半分SFのような話で、近未来日本の景気がどんどん悪くなった頃、日本中が土踊りというものに支配されていくというような話。
ものすごい硬い文体で書かれていて、改行も少なく、もともと長いのもあるかもしれないが、読むのにひどく時間がかかった。
こういう作品を好きか嫌いかと聞かれたら好きじゃない。
好んで手にとって読破するタイプの作品では決してない。これがすばる?という気もした。
ただ、つっこみどころがないとは言えないのだけれど、これだけおかしな世界をばか真面目に堅苦しく語り尽くした、というのはある意味すごい。
根気のいる作業だろうなということは容易に想像がついた。
彼は本当に努力家だ、ということが伝わってきた。好きな作品は筆写するとインタビューでは語っているし。
ひとつずば抜けていればいい
以前文学仲間に、「世に出るにはどんなことでもいいから、ひとつずば抜けてすごいと言われるものがあればいいんだよ。平均的に上手いというよりそっちの方が大切」というようなことを言われたことがあったが、その言葉の正しさが証明されるような受賞作だった気がした。
繰り返して書くけれど、決して好きなタイプの作品ではないし、読んでいてきつかった。
でも、受賞するにはこれくらい努力して、計算して、作品を構築しなくてはいけないのだという意識の部分での刺激は受けることができた。