もう十年以上も前の映画のようだけれど、知り合いに勧められて観てみた。
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史実に忠実
とても忠実に史実を辿った映画だと思った。三時間十分と長いけれど、これだけ観ればガンジーの人生をかなり深く知ることができるだろう。
ガンジーが何をした人かというのは漠然とは知っていたものの、具体的に何をしたのかよく分かっていなかったので、勉強になった。
ただ断食をするだけではなくて、イギリスからの支配に抵抗するために、イギリス人の作った服を着るなと一斉に燃やし始め、自分たちで綿を紡いだり、インド人には許されていなかった製塩を始めたり、抽象的な精神論ではなく、具体的にインド人として何ができるか考え、それを提唱していくところに頭の良さを感じた。
言葉に重み
あと、様々な場面でさらりと言われる言葉に重みがあった。
人間の幸福は物質ではない。たとえ豊かでもね。
幸福は労働と仕事に対する誇りから来る。
インドは村が生命だ。村から貧しさを追放するのが先決だ。
貧乏は最悪の暴力でね。建設的な計画がインドを救う唯一の非暴力的解決だ。
暴力は西洋のもつ不幸だ。それを輸入するのは進歩ではない。
とか……。
一番驚いたのは、息子を回教徒に殺され、回教徒の子供を殺したヒンズー教徒に対し、「地獄に行かずにすむ方法がひとつあります」と語るところ。
「それは父親と母親を殺された子供を拾うのです。回教徒の子供をね」と。さらりと言うところがすごい。
悪は人の心のなかにある
「悪は人の心のなかにある」と言っていたけれど、本当にそうだなと思った。
インドとイギリスの対立が終われば、次は回教徒とヒンズー教徒の戦いになる。
いつの時代にも「いじめ」というものがなくならないように、「差別」だとか、異なるものを排除しようとする心はなくならないのだろうな。
性悪説を信じるわけではないけれど、人の必ず持っている悪い部分もきちんと認めた上で、何ができるかを考えなくてはいけないと思う。
社会的な問題にしても、教育の問題にしても。
この映画を観て思ったのは、一人の力なんて大したことはないとあきらめて何もしないことが一番悪いことなのではないかということ。
もちろん誰もがガンジーのような影響力を持っているわけではない。でも、小さな事からでもこつこつ、自分にできることをするのが大切なのではないかと思った。
映画の作り方自体は好みでなかった
と、学ぶことは色々あり、考えさせられたのだけれど、この映画の作り方自体は、正直あまり好きではなかった。
たくさんのことをした人だから、こういう感じに作らないと三時間にさえ収まらないのだろうとは思うのだけれど、エピソードを入れすぎて、なんとなく表面をさーっとすべっていってしまったような印象が否めなかった。
ガンジーの苦悩のようなものも描かれてはいるのだけれど、どこか人間離れした描き方をされていたように思え、それがちょっと物足りなかったかな……と。
私はもっとシーンやエピソードを抑え、その分、心情描写をしっかりと描き、感情移入できるようにしたものが好きだな。
個人的な好みだけれど。ただ「すごい人」というのではなく、もっと身近な存在に描き、「誰でも社会のために役に立てる」というメッセージを伝えて欲しかった。
ただ、そういうちょっとした消化不良に陥り、その理由を探っていくとき、自分自身の表現に対する譲れないこだわりの部分がどこなのかが見えてきていい。
たまには「絶対私の好みじゃない」と思える本や映画にもちゃんと触れていこう。