町田そのこ

町田そのこ『うつくしが丘の不幸の家』

町田そのこさんの作品は二冊目。

以前、本屋大賞を獲った『52ヘルツのクジラたち』を読んで以来。

町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』の感想はこちら★

 

連作短編

『52ヘルツのクジラたち」は長編だったけれど、この『うつくしが丘の不幸の家』は連作短編集。

調べてみると町田さんは連作短編が多いみたい。

確かに、構成の立て方がうまいなぁと思った。

 

うつくしが丘という郊外に開発された住宅地に建つ一軒家が舞台で、

時期をずらして、同じ家に住む5組の家族の5つの物語。

 

特にいいなと思ったのは、この5組の家族の物語は、時系列と逆になっていること。

つまり、一番新しく住み始めた家族→その前に住んでいた家族→さらにその前に住んでいた家族……と読者は時間をさかのぼって本を読んでいくことになる。

そうすると、例えば2話目の話で出てきた落書きについて、“あぁ、そういう意味か”と3話目で分かったりする。

舞台となる家に住んでいる家族(それぞれの話の主人公)は、他の話の家族とは基本接点はない。

でも、隣に住むおばあさんだけは、一話目~五話目までずっと隣に住んでいて、それぞれの家族を見守る。

 

第一話の主人公は、25年で5回も住む人の変わったその家は「不幸の家だ」と近隣の人に言われ、凹むけれど、お隣のおばあさんは「私はそうは思わないわよ」と言い切る。それぞれ色々あったけれど、それに向き合って、最終的に越していくという選択になっただけだと。

その言葉の意味も、五話全部読んだ後には、じわじわ来る。

 

どの話も最後はハッピーエンドで、しかも“そんなこと、ある?”みたいなわざとらしさはない等身大のハッピーエンドで、読後感がいい。

読む本に迷ったときにはお薦め♪

ダメ男比率が高い?

と、「読者」としては、純粋に「いい本、読んだな」と満足で、人にも薦めよう♪という感じなのだけれど、小説を書いている人間の悲しい性。

小説を読むと、やっぱり自分の書くもの、書けるものとの比較はやっぱりどうしても入る。

物語に入り込んで感動している部分と、どこか冷静に分析してしまう部分が……。

 

で、冷静な部分で考えたのは、自分が家族の問題を5つ選ぶとしたら、どうなるかな、ということ。

そして、『うつくしが丘の不幸の家』は、ダメ男率が結構高いのではないかと思った(笑)

5話の中に、DV男が2人出てくる。不倫する男も。

でも実は、社会全体を見ると、これくらいの確率でダメ男というのはいるのだろうか?

 

得意と不得意の偏り

ま、実際のところは分からないけれど、やっぱり作者によって、当たり前だけど、得意不得意があって、たくさん作品を読むとそれが結構見えてくる。

ひとりの作家の作品が好きというのは、その偏りも含めて好きということなんだな、きっと。

(今年前半は凪良ゆうさんの作品を立て続けに読んでいたから、すごい偏りが見えたけれど、でも、だからこそ安心してまた同じ作家の本を手に取るっていうのもある)

 

以前は得意分野を増やし、偏りを減らすことを考えていた気もするけれど、世の中にはたくさんの作家がいるのだから、私は私の得意、好きに偏って、深堀していくべきなんだろうな。

なんてことも考えさせられた。

 

町田さんの作品はまた読もうと思う💕

 

町田そのこ
『うつくしが丘の不幸の家』

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