瀬尾まいこ

瀬尾まいこ「卵の緒」

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 表題作「卵の緒」は「坊ちゃん文学賞」を獲った作品。
 
 高橋源一郎に「僕はすっかりファンになってしまった」と言わせたというだけあり、とてもパワーのある作品だった。26歳くらいのときに書いたものらしいけれど、いい意味で若い人が書いた作品らしい。こういうのをみずみずしい感性というのだろうか。

 彼女自身、片親という境遇にあるらしく、この本に収録されている二作品は両方とも複雑な家庭環境で育った人と家族の形みたいなものを書いているのだけれど、変にまじめぶったり、深刻ぶったりせず、軽いタッチで書いているのがすごいなぁと本当に感心してしまう。台詞で笑わせるのも上手い。思わずくすりっと笑ってしまったところが随分あった。

 それから「卵の緒」という題名にも象徴されるように(何がどう象徴されているのかは読んでみないと分からないだろうけれど)、比喩の能力というか、突拍子もない思いつきというか、そういうものに一番力を感じた。

 ただ私は「卵の緒」より、一緒に収録されていた「7’s blood」の方が良かったな。「卵の緒」はおもしろくてパワーがあるのだけれど、あまりにも明るく、リズム良く流れすぎてしまって、肝心なことを感じ取れる前に終わってしまった感があったから。短かったというのもあると思うけれど。
 
 それより「7’s blood」の方が、世界に浸れたし、明るいふりをしている登場人物たちの心の中の寂しさも伝わってきたし、読み終わったあとに余韻があった。

 これは主人公の母親が、父親の愛人の子供を、その愛人が刑務所に入っている間預かるという設定で、主人公(高校生の女の子)とその愛人の子供(小学生の男の子)の交流を描いたものなのだけれど、なぜ母が愛人の子を預かろうと思ったのか、その理由を最後、主人公が感じ取るところがあって、そのあたりがすごく良かったなぁ。

 この人の作品は、今の若い人が何をどう書いていくべきかということを示唆してくれるものだと思った。おもしろく読めたし、勉強になった。もちろん私は「坊ちゃん文学賞」のような明るい青春小説を書く気も、エンターテイメントを書く気もないのだけれど、それでも学ぶべきことが多かった気がする。

 彼女の書いた「図書館の神様」を次は読みたい。

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