20代の頃に事故に遭い、首から下が動かなくなったまま二十六年生きた男性が、死ぬ権利を訴える、尊厳死を扱った映画。
体が不自由になったとき死にたいと思うのは仕方ないのかもしれないけれど、死にたいと思っている人についての話を二時間以上かけて見るのは気が重いなという気もしたのだけれど、ぴあの「満足度ランキング」で一位になっていたし、テレビでも何度か取り上げられるのを見るうち、興味が湧いてきて見に行ってきた。
一言でいうと、見て良かった。
確かに「死」を扱ったものなので、重さはあるのだけれど、変に暗くなりすぎず、あたたかさがあって、不思議と心が温まった。
Contents
大切に思うから死なせてあげたいのか、生きて欲しいと思うのか
献身的に看病をする義姉や、甥の存在。
主人公を大切に思うがために死にたいと言う彼の気持ちが許せず衝突する兄。
自分より息子が先に死ぬだけでつらいのに、息子が自ら死にたいと言うなんてと呟く父。
そして彼の気持ちに寄り添う女性の弁護士。彼を愛する近所に住む子持ちでバツイチの女性。
彼を大切に思うがために、死なせてあげたいと思うか、大切だと思うから、生きていて欲しいと思うか、考え方は違っても、みんなが彼のことを真っ直ぐに思っている。
それが、「死にたい」と言う主人公の話ではあるのに、逆に生きることの幸せを見る人に伝える。
尊厳死に「成功」した男の実話
これは実在した男性の話らしい。彼は何人かの友人の助けで自ら命を絶つことに「成功」している。
そんなに愛されていても、やはり体が動けなければ、生きているのは苦痛でしかないのだろうか。この映画の主人公に生きていてもらいたいと思うのは、自分が五体満足だからだろうか。
人生には、自分が経験してみないことには分からないことがたくさんある。この映画の主人公の気持ちはまさにそう。
でも、分からないと切り捨てられない。だから、生きていることの本当の意味はなんだろうと、映画館を出たあと、多くの人は自分に問いかけるのだろう。
テーマも登場人物の作り方、構成の立て方、映像、どれも良かった。
是非多くの人に見てもらいたい映画だと思う。