いいなぁ、瀬尾さんの本、とまた思った。上手いなぁ、ともまた思った。
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文章の読みやすさ
瀬尾さんの本はなぜかとても短時間で読める。でも読みやすく、軽やかなのに、心のなかに余韻がしっかりと残る。これがうまさだな。
最近、プロとアマチュアの分かりやすい差は、文章の読みやすさにあるのではないかと思ったりする。
もちろんプロットとかテーマとか、感性とか描写力とか洞察力とか、大切なものはたくさんあるのだけれど、一番分かりやすいのは、「スムーズに読める文章かどうか」ということ。
ここがクリアされないと、他の力があるかどうか判断するところまでいかない気がする。
だから本当、最近、読みやすく、良い意味で軽く読める文章を書きたいなと思う。そんな私にとって、瀬尾さんの文章は、大きな目標かもしれない。
奇想天外の設定と後味の良さ
この本は短編3作で構成されている。
どの話も、今までの作品と同じように、ちょっと変わった設定で物語が始まり、その変な感じが次第に馴染んできて、すっと心地よく終わる。
瀬尾さんの作品の良さは、「奇想天外な設定」と、それをすんなり読者に受け入れさせてしまうことと、「後味の良さ」。
どの話も、人間の温かさがよく描かれている。
特に2作目など、どろどろと書こうと思えばいくらでも書ける設定なのに、ただのどかに幸せでほほえましい。
どうせ同じ人生を生きるなら、楽しく温かい気持ちで過ごしたらいいんじゃないか、そんなことを瀬尾さんの作品は私たちに伝えてくれる。
いつものごとく、特にあらすじなどは書かないけれど、是非とも読んでもらいたい本。
特に精神的に疲れている人にお勧め、かな。人って良いな、生きているって良いな、と感じられるようになると思う。
題名のインパクトは前の方が…
ただ一つだけケチをつけると、最近の瀬尾さんの作品は以前より題名に力がないのが残念。
「卵の緒」とか「図書室の神様」などの方が「優しい音楽」より思わず気になって手に取ってしまうタイトルなんじゃないかなぁ? ま、内容が良かったので、問題ないけれど。最近はもう瀬尾さんのネームバリューで結構売れているのだろうし。
次の作品も楽しみ!