「二十歳の微熱」「渚のシンドバッド」「ハッシュ!」などの映画監督橋口亮輔さんのエッセイ集。
私は「二十歳の微熱」から結構橋口さんの映画は好きで、そうHPに書いていたら、以前「トップランナー」という番組に橋口さんが出演するとき、観覧に来ませんかとテレビ局の方からメールをもらったことがある。
だから生で観たことのある映画監督の一人。
橋口さんはゲイであることを公表し、作品を作っているのだけれど、見た目かなり格好いい。
Contents
表現者の熱さを感じる
ただこの本を読んでみて、今まで抱いていた印象ががらがらがらっと壊れた。なるほど、こういう人なのか......と。
「トップランナー」で見たときは穏やかで紳士的だったけれど、文章を読んでみると、なかなか毒がある。両親の話なども、結構激しい。
そういうのを読みながら、「やはり成功する人は、違うのねぇ」と思った部分もあるけれど、紳士的な姿しか知らなかったときより、表現者の「熱さ」みたいなものを感じ、より好感を抱くようになったというのもある。
色々なところに発表したものをまとめたものみたいで、同じような話が重複していたり、時々、やはり文章のプロではないのだなと感じてしまう構成のところもあったけれど、でも読んで損はない本だと思う。
特に橋口さんの作品を見たことがある人には、おすすめ!
人の団結力とか愛とか
生い立ちや学生時代、パワフルな母親の話なども面白いのだけれど、でも圧巻はやはりアメリカでエイズと闘うゲイの人と交流したときのエピソード。
橋口さんの友人の日本人は、新しい恋人と暮らしながらも、エイズになり、弱っていく以前の恋人を看病し続けている。それを新しい恋人の方もあたたかく見守っている......という話。
苦境に立ったとき、マイノリティーになってしまったとき、人は強く団結できると橋口さんは書いていたけれど、それだけなのかな。
人の愛って、本当はもっとすごく深くて強いものなのかもしれない、今の私たちの生活ではなかなかそれを発揮できないだけで......そんなことを思ってみた。
小説もいいけれど、エッセイもいいな。この本を読んでいると、橋口さんがカパちゃんのような恋多き男に見えてくるけれど......是非、橋口さんも幸せになれるといい。
やっぱり人間、人と寄り添って生きていかないと、一人で生きられるほどタフじゃないんじゃないかと感じる今日この頃なのです。
無限の荒野で君と出会う日
情報センター出版局 2004-09-16 |