エッセイ

箭内博行「約束の島、約束の祭」

今、沖縄の島を舞台にした作品を書いているので、もともとはその参考文献として手に取った本。

普段、そういう小説の参考に読んだ本は、敢えて人に教えたりしないのだけれど、この本は良かったので、ご紹介!

沖縄の祭りを9年に渡って追いかけた本

作者はフリーのカメラマン。もともと写真は好きだったけれど、写真を仕事にすることは考えず就職するが、理不尽なリストラにあい、退職。

そのあとたまたま訪れた沖縄の島(竹富島)で、「種子取祭」という素敵な祭りがあるから、その時期に是非また来るといいと「おばあ」に言われ、その約束を守って、祭りを撮りに行く。

そこから沖縄の祭りにはまり、様々な祭りを9年に渡って追いかけ、紹介したのがこの本。

 

作者の人柄が素直に伝わってくる

本業はカメラマンなので、文章に変な作為がないのがいいのか、この作者・箭内さんの人柄が非常に素直に伝わってきて、会ったことはないのに、ファンになってしまったというか、応援したくなってしまった(そのため、はじめは図書館で借りて読んでいたのだけれど、途中で購入!)。

沖縄の島の人たちの懐に、すっと入り込み、祭りに対する想いを聞いていく、その姿勢と、箭内さんを通して見えてくる、観光で行くだけでは決して見えない沖縄という島の文化と人の想い。

 

沖縄の人のピュアな信仰心

私にとって沖縄というのは、ダイビングをしに行く海がきれいな場所でしかなかったけれど、沖縄にはこんなにピュアな「信仰心」が残っていて、それがこんなにさまざまな「祭り」という形になって表れているのだということを知ることができたのは、非常に良かった。

 

私は、沖縄には8月末によく行っていたので、与那国島ではちょうど祭りの日にあたったことがある。

その日は民宿の人もばたばたしていて、「夕食は千円渡すから、適当に食べてきて」というような扱いを受けたけれど(汗)、民宿のなかに祭りの人たちが入ってきて歌ったり踊ったりしているのを、まるでその家の住人かのように見せてもらったのは、いい体験だった。

 

ただ、8月末から9月頭が「旧盆」で、沖縄の人にとってのお盆だったのだということは、この本を読んで初めて知った。

色々な本を読むと、自分の知っている世界の狭さを痛感する。世界はもっとずっと広い。そしてもっとずっと深い。

 

とても良いノンフィクション

本の中では10種類の沖縄の離島(八重山諸島)の祭りが紹介されているので、「こんな祭りがあるんだ」と興味深く読むこともできるし、一人の青年の旅エッセイとしても楽しく読める。

沖縄好きな人、祭り好きな人、エッセイやノンフィクション好きの人、人とのあったかい交流に触れたい気分の人......などにお勧めです☆

 

でも、いいノンフィクションの作品に出会うと、「フィクション」の作り手としては、身が引き締まる思いがする。どうやったら、フィクションは、ノンフィクションに敵うのだろう、と。

これは、ひとりごと(笑)

約束の島、約束の祭約束の島、約束の祭
箭内博行

 

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