このあいだ書いた「人のセックスを笑うな」と同時に文藝賞を受賞した小説。
「コミック世代」だ、「軽い」だ何だと言われながら、芥川賞の候補にまでなり、今度は亀梨和也(KAT-TUN)、山下智久(NEWS)主演でドラマ化されるらしい。なんか、おいしい道を突っ走っているなぁ。素敵!
(でも、「俺」が格好いいのは分かるけれど、格好いい主演二人って、俺ともう一人は誰なんだ?! 野ブタは主演じゃないのか?!)......と、私が熱くなっても読んでいない人には伝わらないか(^^;)
Contents
コミック的軽さと文学的ラスト
私は結構この本は好き。自分が目指す方向とはかけ離れた方向に走っているから、闘争心も湧かず、素直に読者として誉められてしまうのかもしれないけれどね。
確かに少年マンガらしい色は濃く出ているし、でもマンガになりきれていず、変に文学としてまとめようとしているところが、尻すぼみな印象になってしまったりもするのだけれど(でもこういうラストだから、芥川賞の候補にまでなれるのだろうけれどね。もっとただ突っ走った、おもしろいだけの作品だったら、純文学会からは無視されていただろう)、それでも、やっぱり「今」の感じをきちんと「等身大」で描き出している感じに好感が持てた。
それになにより楽しく、スムーズに読み切ることができる。それは重要だ。
笑いのツボは合っているような合っていないような感じで、向こうの世界だけ熱い......と思うところもあったけれど、ところどころ電車の中でもにやついてしまうくらいおもしろかった。
「コミック世代」なのはそうだろうけれど、コミックを読んで育ったすべての人が、同じだけの笑いや軽やかさのセンスを身につけられるわけではないのだから、コミックの真似であろうと、白岩さんはちゃんと「技」を身につけている人だと私は思う。
独自の文体
今回の作品はストーリー的にも目の付け所が良かったというのはあるだろうけれど、「初めて書いた作品で勢いで賞を獲ってしまった」というような感じに話している専門学校生(白岩さん)をテレビで観たときとは違い、作品を読んだあとは、まだ3作は行けるな、という気がした。このちょっと独特な笑いと軽やかさはきちんとした「文体」になっている気がするから。
多分、小説を書いている人や普段から読書をしている人にこの作品を読ませたら、大部分は「おもしろいけれどねぇ......」というくらいの感想だろうと思う。だからまぁ、敢えて「是非読んで」とは薦めないけれど、私はこの作品、結構好きでした。
そして次回はコミックと文学の狭間で中途半端になることなく、独自の世界観をきっちりと築き、もっとインパクトに残る作品を書いてもらいたい!などとちょっと偉そうなことを言って、締めてみます(笑)
野ブタ。をプロデュース
河出書房新社 2004-11-20 |