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羽田圭介「スクラップアンドビルド」

又吉さんと一緒に芥川賞を受賞した羽田圭介さんの「スクラップアンドビルド」を読んでみました。

本を読む前に、バラエティー番組で本人を見、「変わった人だなぁ」という先入観は抱いていましたが、作品は、その「奇才ぶり」をしっかり生かしつつも、非常に骨太な作品で、好感が持てる「文学」でした。

 

文学好きにはお薦めの骨太な作品

この本のテーマは、同居する祖父の介護。毎日「もう死んだらいい」と言う祖父を希望通り弱らせるのが自分の使命だと考え、行動する30歳無職の男性の話。

設定で主人公・健斗は「三流大学卒」ということになっているけれど、健斗の考えは、非常に偏っていて危険ではあるものの、ある意味では非常に賢く、その不思議な知的さが、おもしろい。

 

自分なんて死んだらいいと言い、できることが日々減っていく祖父の介護の話というと、ただひたすら重く、暗い印象を与えるが、決してじめじめはしていない。

健斗がちょっとおかしな論理ながらも、しっかり自分の考えを持ち、その方針に沿って着々と行動していく様が、むしろ清々しい。

 

又吉さんの作品より「確かに純文学だ」という「文学性」を感じさせるけれど、決して読みづらくはなく、重いテーマの割に、楽しんで読める。

「スクラップアンドビルド」は、個人的には「こういう作品にこそ芥川賞を獲ってもらいたい」と思うタイプの作品だった。

 

誰に対してもお薦めという感じの作品ではないけれど、都合の良いハッピーエンドの娯楽小説になんとなく胡散臭さを感じてしまうような、ちょっとひねくれた文学好きにとっては一読の価値ありの作品だと思う。

スクラップ・アンド・ビルドスクラップ・アンド・ビルド
羽田 圭介火花 流 黒冷水 (河出文庫) ミート・ザ・ビート (文春文庫) アンチヘイト・ダイアローグ
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